〈a href="https://plus.google.com/u/0/102667563044732818612?rel="author"〉+Naoyuki Shibata

税務署長等が行った課税処分等に不服がある納税者は、自己の権利の救済を求めて、
①税務署長等に対する異議申立て、
②国税不服審判所長に対する審査請求、
③裁判所に対する訴訟提起、
といった法的手段を採ることができます。
 
もっとも、課税庁側と納税者側とのパワーバランスは様々な意味において
均衡ではなく、納税者側の主張が認められる割合は、異議申立てにおいて10.0%,審査請求において、12.9%,訴訟において7.6%と低率を維持したままとなっています。
 
税理士、公認会計士、弁護士といった専門家に費用を払って依頼して時間をかけて争っても、なかなか自分たちの主張が認められないということは、いくら上述したような法的手段が整備されているとはいっても、それは絵に描いた餅にすぎません。
 
また、税務調査段階で偏った証拠資料ばかりが収集されかつ、それに沿ったストーリーが構築されてしまっていては、課税処分がなされた後になってあわててもそれは後の祭りというほかはありません。
 
質問検査権の名のもとに行き過ぎた税務調査がなされるおそれがあることはいまだ否定することはできません。
 
そうはいっても納税は国民の義務であり、納税者側は、認められた法制度の枠内で適法に自己の権利をじつげんしていくほかはありません。
 
税務調査において適切に対応し、異議申立て、審査請求、訴訟という一連の法的手続きの中で、説得的に自己の主張の正当性を展開していくほかないのです。
 
このような観点から、本コーナーにおいては税務調査から訴訟までの一連の流れをそして、可能な限りの対応方を平易かつ具体的にまた、経験を踏まえて説明していくこととしました。
 
本コーナーが皆様のお役に立てれば幸いです。

目次

 

第1章 税務調査

Q1ー1 税務調査とはどのようなものですか。また、どのような種類がありますか。

Q1−2 税務調査はどのように進められるのですか。

Q1−3 税務調査の担当部署について教えてください。

Q1−4 税務調査における留意点について教えてください。

Q1−5 税務調査中に質問調書を作成するといわれました。どう対処したらよいか教えてください。

Q1−6 税務署の職員の上下関係がわかりません。肩書きについて教えてください。

Q1−7 税務調査はどのように終了するのですか。終了時における留意点についても教えてください。

Q1−8 税務調査終了後に、税務署から通知書(更正通知書)が送付されてきましたが、どのように対処すればよいですか。

第2章 異議申立て

Q2−1 訴願前置主義とはどのようなことですか。 

Q2−2 更正の理由付記について教えてください。 

Q2−3 異議申立てを行う際の期限や進め方について教えてください。

Q2−4 異議申立書の書き方について教えてください。

Q2−5 異議申立てを行うにあたって注意しなければならない事項について教えてください。

Q2−6 異議申立てを行うに際しては、更正処分等された税額は納税をしておかなければいけませんか。

第3章 審査請求編 

Q3−1 異議決定書を受け取りましたが、その結論に納得できません。どのようにしたらよいですか。

Q3−2 国税不服審判所とはどのようなところですか。

Q3−3 審査請求の流れについて教えてください。

Q3−4 審査請求書の書き方について教えてください。

Q3−5 審査請求について特に注意しなければならない事項を教えてください。

第4章 租税訴訟

Q4−1 租税訴訟とはどのようなものでしょうか。

Q4−2 どのような場合に租税訴訟を提起したらよいのでしょうか。

          租税訴訟を提起することのメリット、デメリットについて教えてください。

Q4−3 租税訴訟を起こして勝てるのですか。

Q4−4 租税訴訟はどのくらいの期間続くのですか。

Q4−5 租税訴訟が通常の民事裁判と異なる点について教えてください。

Q4−6 租税訴訟はどこで裁判が開かれるのですか。また、どこで裁判を起こした方がよいですか。

Q4−7 租税訴訟はどのように提起するのですか。

Q4−8 租税訴訟にはどのような種類があるのですか。

Q4−9 弁護士はどのようにして選べばよいのですか。

Q4−10 補佐人税理士とはどのようなものですか。補佐人税理士を付けた方がよいですか。

Q4−11 租税訴訟における実際の裁判はどのように進行するのですか。

Q4−12 判決とはどのようなものですか。判決に不満があるときにはどうしたらよいですか。NEW

Q4−13 納税者側が最終的に勝訴した判決にはどのようなものがあるのですか。NEW

納税者が自主的に税務署に協力する以外の、税務署による納税者への接触が広い意味での税務調査になります。

その種類としては、「実地調査」、「反面調査」、「強制調査」があります。

 

解説

 税務署が納税者に対して行う質問等の公権力の行使は、国税通則法第74条の2(平成23年12月2日改正、平成25年1月1日施行)以下に規定されている「質問検査権」をその根拠にしており、この「質問検査権」の行使による税務署の活動が広い意味での税務調査にあたります。

狭い意味で考えますと、税務署側が納税者に対して行う、納税者宅や会社事務所に臨場しての、所得内容の確認行為が税務調査になります。

この納税者宅等に臨場して行う調査を「実地調査」と呼んでいます。

また、納税者から提出された申告書を、税務署内において検算、確認等を行う行為を机上調査と呼んでいます。

この反面調査には、実際に取引先に臨場して行う調査と、書面を郵送して行う文書照会とがあります。臨場する場合は「質問検査権」の行使になりますが、文書照会は法的には協力要請になります。

 

なぜならば、「質問検査権」を行使する場合には、身分証明書および質問検査証の提示が必要とされている(同法第74条の13)のですが、文書照会の場合には、この要件を満たすことができませんので、結果として協力要請にならざるをえないからです。

 

これらご説明してきた調査はひとまとめにして「任意調査」と呼ばれています。ただし「任意」と言われてはいますが、調査を受けるのが任意でよいという意味ではありません。

次に述べる「強制」に対応するという意味で言われているだけで、先に述べたとおり国税通則法(平成23年12月2日改正)で規定されている「質問検査権」に裏打ちされていますし、この「任意調査」に応じない場合には罰則(刑事罰)も規定されています。(同法第127条2号、3号)ので、決して任意ではありません。

ところで、これらの任意調査と別次元に「強制調査」があります。

この「強制調査」は、国税犯則取締法に基づくもので、通常は各国税局の査察部によって行われ、裁判所によって発行される証憑「令状」に基づいて行われます。(同法第2条)

査察調査は、ほかの税務調査とは異なり、管轄というものがありませんので、たとえば東京の法人に名古屋国税局の査察部が強制調査を行うこともあり得ます。

JTRIM法人税.png

A 税務調査は税務署からの実地調査の連絡(事前通知)で始まりますす。。

そして帳簿調査や代表者や従業員に対する質問、 場合によっては取取引引先に対する反面調査や銀行調査によって行われ、 税務署からの調査結果に基づく処分の通知書の到達によって終了します。

 

解説

税務調査は、 通常は税務署からの電話等による事前通知によって納税者 (会社) に知らされ、、臨場の日程を決めて開始されます。

この電話等による連絡が最初に会社に対して行われた場合には、 調査担当者はその後速やかに関与税理士に対しても同様の連絡を行うことになっています。

 

会社、関与税理士、調査担当者の3者の予定をすり合わせて、臨場する日程を決めます。税務署側から当初に伝えられた 日程について、 代表者や関与税理士の予定が既に埋まっていて都合がつかない場合等には、調査担当者に話して日時の変更をすることは全く問題なく、遠慮する必要はありません。

 

ごくまれに、 事前連絡なしにある日突然税務署職員が調査で会社事務所等に臨場することがありますが、 この場合には、 会社代表者 (社長) や関与税理士の都合がつかない場合 (すでに取引先との商談がある場合や、 他社の税務調査の立会いが予定されている場合等)、、その日の調査に応じる必要はありません。後日仕切り直しをして調査を受けることにしてかまいまいまませせんん。

 

ところで、平成23年 12月2日に改正された国税通則法では、その第74条の9で調査の事前通知等に関して新たな規定を設けました。 この規定内容は現行の取扱いからはみ出るようなものではなく、 現状の慣行を追認したものとなっています。

 

臨場調査のはじめには、 まず調査担当者から 「身分証明書」 および 「質問検査証」」 の提示があり、ついで名刺交換が行われることになります。その際、関与税理士は、 「税理士証票」」 を提示することになっています(税理士法第32条) 。

 

その後、 会社概況等の説明が求められ、 会社側は資料等をもとに会社の概況の説明を簡単に行います。

できれば代表者等が応答するのが望ましいのですが、 経理部長や課長が代行しても何ら問題はありません。

 

ついで経理システム等の説明を行った後に帳簿調査が開始されます。

事業規模が大きく、元帳等では事業内容の把握が難しい場合には、取締役会議事録や稟議書等の閲覧が行われ、 調査対象を絞り込むようなことが行われます。 取引内容について説明を求められることがありますが、 経理で対応するのもよいし、場合によっては取引担当者が説明するのもよし、 とにかく正確に事実関係を説明できればOKです。

 

その後必要が生じた場合には、 現場確認や在庫のチェック等が行われることもあります。

また、 取引先や銀行に対して、 いわゆる反面調査が行われることもあります。

このようにして調査が続けられ、 会社が提出した申告書の内容の適否が判断され、 調査担当者が申告書の内容に誤りがあると判断した場合には、 その内容と担当者の見解が会社側および関与税理士に伝えられます。

 

会社側は必要に応じて反論を行い、 関与税理士も意見があれば担当者に伝えます。 その結果、調査担当者の見解が変わる事もあり、 最終的な結論が担当者から出されます。

 

その結論に納得できれば、修正申告の提出等をすることもありますし、 更正の通知を受けることもできます。

 

逆に税務署側の結論に会社側が納得できない場合には、 その旨を伝え税務署から更正通知書が送られてくるのを待ちます。

どちらにしても、 税務調査担当者から結論が告げられ、 それによって実地調査は終了する方向に向かいます。

A 国税庁を頂点として全国に11の国税局と1つの国税事務所所((沖沖縄))があり、その下に524の税務署があります。

 

それぞれに組織の大小は別として、総務系統の部門、個人課税部門、資産課税部門、法人課税部門、徴収部門および対外部との窓口部門があります。 これとは別に国税庁と国税局等には調査部と査察部があります。

 

税務署で調査を担当する部門は、 個人課税部門、 資産課税部門と、法人課税部門になります。

 

一方国税局では、大規模法人(通常は資本金で判断し、原則資本金1億円超の法人が該当します。 ) の税務調査は調査部が、 法人の大小を問わず脱税事案は査察部が担当します。

 

課税部には資料調査課が置かれ、 資本金では大規模法人とはされていない法人や、個人の事案のうち、税務署では扱いにくい複雑な案件や著名法人および著名な個人に対する調査を担当しています。

 

【解説】

 

国税の組織は、国税庁を頂点としたピラミッド組織となっており、それぞれに同様の部門を配置しています。 指揮命令系統はそれぞれの部門 (法人課税、 個人課税等) ごとに国税庁を頂点とし、国税局そして税務署と縦割りになっています。

 

個人課税部門では、 自然人に対する申告所得税を中心に所掌し、 資産課税部門では相続税および贈与税と、 申告所得税のうち譲渡所得の一部について所掌しています。 法人課税部門では法人に対する課税すべて(法人税、消費税、源泉徴収所得税、印紙税やその他諸税) を所掌しています。 ですから、 法人に対する税務調査は法人課税部門の職員が担当し、個人の申告所得税や消費税等の税務調査に関しては個人課税部門が担当し、 個人の相続税や贈与税等の税務調査については、 資産課税部門の職員が担当することになります。

 

国税局に置かれている調査部は大規模法人 (通常は資本金で判断し、 原則資本金1金億1億円超の法人が該当します。 ) の法人税および消費税の調査を担当し、 査察部は法人の大小を問わず脱税事案を担当します。

 

課税部の中に置かれた資料調査課は、 税務署では扱うのが難しい複雑困難事案や、 著名法人、著名人等の調査を担当します。 この資料調査課も個人課税担当、 資産課税担当、 法人課税担当に細分され、 大規模局では、 外国人調査担当や、 国際課税担当も置かれています。

 

税務署においても大規模署においては、 たとえば法人課税部門は、 内部部門、 消費税および間接諸税部門、源泉所得税部門、特別調査部門、一般部門や、特別国税調査官部門、国際調査担当部門等に細分化されています。 また、 個人法人にまたがる調査対象者に対し、 法人税、申告所得税、 相続および贈与税に関して一体的調査を担当する総合調査担当特別国税調査官部門が置かれているところもあります。

 

なお、 源泉所得税に関しては、 どんなに大規模な法人であっても、 国税局の調査部が担当することは無く、 すべて税務署の法人課税部門の源泉所得税部門等が調査を担当することになっています。

国税庁組織図.png

税務署の規模によって置かれている部門の種類や数が異なります

A

調査担当者に事実関係を正確に伝えることが一番大切なことです。

また、調査の過程の記録を正確に作成しておくことです。

 

【解説】

税務調査は数年おき、極端な場合は10年おきくらいに行われます。調査担当者は、会社が何年もかかって行ってきたことを、わずか数日あるいは数週間で調査することになりますから、会社が行ってきた活動のすべてのことを正確に理解するのはしょせん無理なことです。

 

一方、税務上の判断は、事実関係の法令及び通達Yへの当てはめや法令解釈によって行われますから、事実関係の正確な把握は必要不可欠な事項です。したがって調査担当者から求められた事項に関する説明は、特に事実関係に関することは正確に調査担当者に伝える必要があります。

 

当時その事項について記録された色入れな書類をもとに説明する必要があります。調査担当者が求めるのは、単なる言葉による説明だけでなく、客観的な資料に基づく説明です。客観的な資料によって説明を行うことが、調査担当者の誤解を招くことなく正確に事実関係を理解してもらう早道です。

 

(POINT普段から税務調査を意識した疎明資料の作成を心がけてください。また稟議書や企画立案書には後日誤解を招くような事項や表現の記載は極力避けるようにして下さい)

 

調査の途中や終了時に調査担当者と議論になることがありますし、更に最終結論に納得できない場合にはその後税当局と訴訟などで争うことになりますので、調査の過程を正確に記録することが必要です。

 

また、調査の過程で会社側から調査担当者に渡した資料については、何を渡したのかも正確に把握しておかなければなりません。特にコピーを要求されて、帳票などのコピーをした場合には、調査担当者に渡す分だけでなく会社控えもコピーすることを習慣づけてください。後日紛争がおきた場合のために重要な情報(税務署が何を得ているかを知っておくことは、後日議論する場合の重要な要素となります。)の確保をするということを心がけてください。

 

ところで、たまに調査の過程で文書の提出を求められることがあります。特に調査担当者が不正行為だと判断した場合には、往々にして質問顛末書やいわゆる反省文の提出を求め事があります。最近は特に質問顛末書を取ろうとする傾向が強いようです。(質問顛末書については次のQ&A参照)

 

これに従うか否かは基本的に納税者(会社)の自由ですが、そもそもこのような文書の提出を求めるときは、不正行為の判断(いわゆる重加算税の適用)に調査担当者が自信のない場合が多いようです。

 

反省文の提出において特に注意しておきたいのは、不正計算がその額が多額にのぼり青色申告の取消し要因に該当する場合、諸事情を考慮して反省文の提出を理由に青色申告の継続が認められることがありますので、このあたりの事情を理解したうえで調査担当者から文書の提出を求められた場合には、自身の置かれた状況を適格に判断してそれに対処することが必要になります。

 

A

調査の過程において、調査担当者が重要だと判断した事項について、質疑応答形式で記録し作成する調査資料が「質問調書」(あるいは質問顛末書という。)です。

調査において、重要なことだと調査担当者が判断した部分ですので、回答した事項が過不足なく正確に記載されるように注意しなければなりません。

 

【解説】

調査の過程において、調査担当者が行った質問に対する納税者の回答を、後日のために記録する手法の一つです。通常は調査担当者が作成する調査記録(メモ)で対応するのですが、さらにそれを明確化するために調査担当者の判断(ないしは調査担当者の上司の指示)により、質問とそれに対する回答という形式で記録するものです。

 

質問調書を作成する理由としては後日の紛争を想定して(税務訴訟までも考えて)正確な記録を行うということが挙げられます。税務判断に関する重要な事実などを記録することに主眼を置いていますが、ときには「言った、言わない」というような水掛け論を避ける意味合いを持つこともあります。また、これとは別に、ある意味納税者(回答者)に対する精神的圧力となることもあります。

 

質問調書の作成が終わりますと、調査担当者(録取者)が質問調書を読み上げ、記載誤りがないかを尋ねられ、その後質問調書に「上記のとおり相違ありません。」というような文章を書いて署名、押印をすることを求められます。

 

このような場合。内容の正否について即断ができなければ、その旨告げ、時間をもらって検討することは問題ありません。また内容に誤りがあった場合には訂正を求めることも必要です。後日のために、記載された内容を複写するか書き写しておくことも大切なことです。

 

内容に誤りがない場合に、署名押印を促されますが、するもしないも全く納税者の自由です。

 

それは、署名しない場合でも、調査担当者(録取者)がその旨記載すれば、それで質問調書は完成となるからです。

A

税務署でいえば一番トップは署長で、次が担当副所長になります。その下は統括国税調査官、上席国税調査官、国税調査官になります。肩書のない職員は事務官と呼ばれていて調査官の下になります。

また、調査部門のトップが統括国税調査官ではなく、特別国税調査官になる部門もあります。

通常は、特別国税調査官の方が統括国税調査官より上位に位置します。

 

解説

通常の調査を担当する部門は、そのトップが統括国税調査官で通称「統括」(関西では統官と呼びます)と呼ばれています。その配下に「上席国税調査官」及び「国税調査官」、事務官がいます。税務大学校を卒業して最初に税務署に配属された人たちは事務官になります。

 

調査に臨場するのは通常は上席以下で、企業規模により単独で臨場する場合もあり、複数で臨場する場合もあります。

 

調査のまとめの時点では通常統括が登場してきます。複雑困難事案となってしまった場合には担当副署長が登場する場合もあります。

 

調査結果の部内決済は事案の規模により異なりますが、統括官が決済できる事案、担当副所長が決済する事案、署長決済を要する事案に区分することができます。

 

特別国税調査官(通称「特官」)の場合は以下「上席」、「調査官」、「事務官」になります。このラインの場合の指揮命令系統は署長、特官となります。特官の中に統括特官と呼ばれている方入る場合は、署長、統括特官、特官となります。

 

ところで、国税局調査部の場合は、調査部門のトップは統括国税調査官となり、以下「総括主査」「主査」「国税調査官」となります。

 

局の統括国税調査官は税務署の副所長クラスと同位かそれ以上になります。また主査は税務署の統括と同位になります。

 

なお、他の官庁の職名は当然に国税の世界とは異なり、たとえば調査官の肩書きの方がかなり上位のことが多々ありますので混同は禁物です。

 

A

税務調査は、その最終局面において調査担当者から税務署側の結論が告げられ、非違がある場合には次いで修正申告書の提出のしょうようが行われます(国税通則法(平成 23年12月2 日改正)第74条の11第 3項前段)。そのしょうようについて応諾するか拒否をするかを、納税者(会社)が調査担当者に告げることによって終局を迎えます。修正申告書を提出する場合は、修正申告書を提出し、追加税額の納付を行い、後日加算税の賦課決定書と延滞税のお知らせが来て 、これらの付帯税を納付すると完了します 。

 

非遣があると告げられたものの、修正申告書の提出に応じない場合には、税務署長から更正の通知書が送付されてきて、一応実地調査は終了し、第 2 ラウンドに突入することになります 。

 

なお、非違が認められない場合(調査是認の場合)には、その旨の通知書が税務署長から送られてきます(国税通則法(平成 23年12月 2 日改正)第74条の11第 1項) 。

 

解説

税務調査が終盤になると、調査担当者から調査結果が告げられます。

それに納得した場合には、修正申告のしょうように従い修正申告書を提出するのが通常ですが、親会社に対する説明等必要がある場合には、更正処分を受けることも可能です。

 

修正申告書の提出と、更正処分の遣いは、修正申告書の提出の場合は、その後の行動(異議申立て、審査請求、税務訴訟)が一切できなくなるということです。

 

当然に更正処分を選択した場合にはこれらの 事項を行う権利が生まれます。また、修正申告の場合には、税務調査の結果について、特にその理由については、公式な文書による説明はないことになります。

 

一方、更正処分の場合は、法人税や申告所得税の場合で、青色申告を行っていれば、その処分内容について理由付記が行われますので( 法人税法第 130条2項、所得税法第 155条2項)、税務署側の公式な理由説明が得られることになります。

 

また、そもそも税務署側の結論に納得できず争おうと思っている場合には、必ず更正処分を受けなければなりません。

 ところで、修正申告を行うにしろ更正処分を受けるにしろ追加納税が必要な事態になれば、これを納税しなければならないのですが、この追加納税額の納期限は、修正申告の場合には その修正申告書の提出日が法定納期限になります(国税通則法第35条2項 1号)。

 

一方、更正処分の場合には、更正通知書が発せられた日の翌日から1 ヵ月後が法定納期限になります(同 項2号)。

 

さらに、修正申告の場合も更正処分の場合も、追加納税額が発生した場合には、これらの本税に対して加算税が課されます。通常のミスや法令解釈誤り等の場合には過少申告加算税が (同法第65条)、不正計算による場合には重加算税が課されます(同法第 68条)。これら加算税は賦課課税となりますので、加算税の賦課決定通知書が税務署から送られてくることになります(同法第32条3項)。

 

また、この追加納税に関しては、本来の納期限から延滞税がかかることになりますが(同法 第60条2項)、過少対象の修正申告や更正処分の場合には、当初の法定納期限から 1年が経過した段階で一旦ストップになります。その後追加納付に係る法定納期限から追加の延滞税の 計算が新たに始まることになります(同法第  61条 1項)。

 

したがって、税務調査による追徴額を速やかに納付が行えれば問題はないのですが、資金繰り等の関係で直ちに納付ができない場合には、延滞税が再スター卜することを考慮して、修正申告か更正処分かを選択することも重要になります。

 

なお、不正計算による重加算税対象所得に対応する追加納税額には、延滞税の 1年打切りはありませんので、くれぐれも不正行為はしないようにしましょう。

 

ところで、非遣なしで調査が終了する場合ですが、国税通則法(平成  23年 12月2日改正)では、第74条の1 1第 1項で文書による「更正決定等をすべきと認められない旨の通知の通知」を規定しましたので、書面による調査是認の通知が行われることになりました。

まず最初に、書かれている内容を確認します。調査の過程でおおよその処分内容に ついては調査担当者等から説明がされていたと思いますが、貴社が青色申告 をしていれば、青色の理由付記といわれるものが行われていますので、その記載内容と説明を受けていた内容とが一致しているかを確認します 。

 

 法人税や申告所得税以外の税目(たとえば源泉徴収所得税や相続税)では、現状では理由付記がされない場合もありますので、所得金額や税額について、調査の際に説明を受けた金額と一致するかを確認します 。

 

次にそもそも今回の税務署側の結論に、貴社(貴者)が納得できるものなのか否 かによって対応が異なります 。 

 

内容に納得できるのであれば、後は淡々と納税を済ませればそれで終了となります。 

 

税務署側の今回の処分に納得できない場合には、異議申立て等を行うことになり ます。

 

解説

 

税務署からは署長名で更正処分通知 書等が送られてきます(国税通則法第  28条 1項)。

 

通常は簡易書留郵便で送達が行われます。処分に納得できない場合には次のステップに進む ことになりますが、その手続きには期限があり、その起算日は貴社(貴方)がこの通知書の送達

を受けた日が基準になりますので、何年何月何日に誰が受領したかは確認をしておかなければなりません。

 

次にその処分の通知書に書かれた内容を確認します。調査の際に担当者から説明されていた金額および内容と一致しているのかを調べます。青色の更正の場合には理由付記がされていますのでその記載内容も確認します。ところで、法人税等の青色の理由付記は更正処分の法律要件になっていますので(法人税法第   130条2項、所得税法第 155条 2項)、その内容に不備があった場合には、更正処分自体の取消し原因となります。

 

したがってその記載が間違っていないか、かつ十分に説明が行われているかも慎重に確認をしなければなりません。一方、

源泉徴収所得税や相続税等の場合の理由付記は、仮にされていたとしてもそもそも法律要件ではなく行政サービスとして晋かれていますので、その内容等にたとえ不備があったとしても取消し要因とはなりませんが、事前に説明がされていた内容と同一の理由であるか否かは、今後の対応のときに必要なポイントになりますので、しっかりと確認をすることになります。

 

確認後に今回の処分に納得できた場合には、同封されている納付書にしたがって本税および加算税の納税を行い、その後地方税関係の処理を行うことになります。また後日送られてく

る延滞税のお知らせにしたがって延滞税を納付することにより、今回の税務調査は終了することになります。

 

 一方、今回の調査結果に納得できない場合には(そもそも納得できないから修正申告をせず、更正処分を受けたのでしょうが。)、次のステップ(異議申立て等)に移行することになります。

 

なお、平成23年度税制改正により、処分の理由付記については平成25年1月1日以後に行われる処分からすべての処分について理由が付されることとなります。(国税通則法第74条の14)

(ただし個人の白色申告者等に対する更正等にかかる理由付記についてはすでに記帳義務、帳簿保存義務が課されている者を除き、記帳・帳簿等保存義務の拡大(平成26年1月)に併せて実施することになります。)

 

 

Q2-1 訴願前置主義とはどのようなことですか。

A

税務行政においては、行政庁(税務署側)の行政処分等(更正決定等)に不服がある(納得できない)場合に、直ちに裁判所にその処分等の取消しを求める(税務署を訴える)ことはできず、その前に異議申立てや審査請求を行わなければならない制度のことをいいます(不服申立前置制度ともいいます(国税通則法第115条1項柱害本文)。)。

 

解説

 

税務行政は大勢の納税者を対象に行われており、かつ法に則り画一的な処理を行っていくものであるため、更正処分等に対する不服も全国的に見れば大量に発生する可能性があります。そのため、不服処理についても、すべてを最初から裁判所に委ねてしまうと収拾のつかない事態を招くことにもなりかねません。

 

また、税務は専門的で複雑な知識が要求され、そのうえ裁判所における審理は慎重に行われますので、最初から裁判所に委ねてしまうと、迅速な処理が難しいという状況も招きかねません。そこで裁判所に委ねる前に専門的知識や豊富な経験を有する行政庁による救済を図る制度を設けるほうが、納税者にとっても、また司法側にとっても適当であるため、設けられたのがこの訴願前置方式(不服申立前置制度)です。

 

更正処分に不服がある場合には、原処分庁(調査を行った税務署等)に対する異議申立て、あるいは法人税法・所得税法が規定する青色の場合の異議申立てをパスしての国税不服審判所に対する審査請求を経て(異議申立てをして棄却をされた場合には、審査請求を経た後)から裁判所への訴訟申立てとなります。

 

 

 

 

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