〈a href="https://plus.google.com/u/0/102667563044732818612?rel="author"〉+Naoyuki Shibata

〒470-0113 愛知県日進市栄2丁目1306番地 ノースステージ2F

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税務署長等が行った課税処分等に不服がある納税者は、自己の権利の救済を求めて、
①税務署長等に対する異議申立て、
②国税不服審判所長に対する審査請求、
③裁判所に対する訴訟提起、
といった法的手段を採ることができます。
 
もっとも、課税庁側と納税者側とのパワーバランスは様々な意味において
均衡ではなく、納税者側の主張が認められる割合は、異議申立てにおいて10.0%,審査請求において、12.9%,訴訟において7.6%と低率を維持したままとなっています。
 
税理士、公認会計士、弁護士といった専門家に費用を払って依頼して時間をかけて争っても、なかなか自分たちの主張が認められないということは、いくら上述したような法的手段が整備されているとはいっても、それは絵に描いた餅にすぎません。
 
また、税務調査段階で偏った証拠資料ばかりが収集されかつ、それに沿ったストーリーが構築されてしまっていては、課税処分がなされた後になってあわててもそれは後の祭りというほかはありません。
 
質問検査権の名のもとに行き過ぎた税務調査がなされるおそれがあることはいまだ否定することはできません。
 
そうはいっても納税は国民の義務であり、納税者側は、認められた法制度の枠内で適法に自己の権利をじつげんしていくほかはありません。
 
税務調査において適切に対応し、異議申立て、審査請求、訴訟という一連の法的手続きの中で、説得的に自己の主張の正当性を展開していくほかないのです。
 
このような観点から、本コーナーにおいては税務調査から訴訟までの一連の流れをそして、可能な限りの対応方を平易かつ具体的にまた、経験を踏まえて説明していくこととしました。
 
本コーナーが皆様のお役に立てれば幸いです。

目次

 

第1章 税務調査

Q1ー1 税務調査とはどのようなものですか。また、どのような種類がありますか。

Q1−2 税務調査はどのように進められるのですか。

Q1−3 税務調査の担当部署について教えてください。

Q1−4 税務調査における留意点について教えてください。

Q1−5 税務調査中に質問調書を作成するといわれました。どう対処したらよいか教えてください。

Q1−6 税務署の職員の上下関係がわかりません。肩書きについて教えてください。

Q1−7 税務調査はどのように終了するのですか。終了時における留意点についても教えてください。

Q1−8 税務調査終了後に、税務署から通知書(更正通知書)が送付されてきましたが、どのように対処すればよいですか。

第2章 異議申立て

Q2−1 訴願前置主義とはどのようなことですか。 

Q2−2 更正の理由付記について教えてください。 

Q2−3 異議申立てを行う際の期限や進め方について教えてください。

Q2−4 異議申立書の書き方について教えてください。

Q2−5 異議申立てを行うにあたって注意しなければならない事項について教えてください。

Q2−6 異議申立てを行うに際しては、更正処分等された税額は納税をしておかなければいけませんか。

第3章 審査請求編 

Q3−1 異議決定書を受け取りましたが、その結論に納得できません。どのようにしたらよいですか。

Q3−2 国税不服審判所とはどのようなところですか。

Q3−3 審査請求の流れについて教えてください。

Q3−4 審査請求書の書き方について教えてください。

Q3−5 審査請求について特に注意しなければならない事項を教えてください。

第4章 租税訴訟

Q4−1 租税訴訟とはどのようなものでしょうか。

Q4−2 どのような場合に租税訴訟を提起したらよいのでしょうか。

          租税訴訟を提起することのメリット、デメリットについて教えてください。

Q4−3 租税訴訟を起こして勝てるのですか。

Q4−4 租税訴訟はどのくらいの期間続くのですか。

Q4−5 租税訴訟が通常の民事裁判と異なる点について教えてください。

Q4−6 租税訴訟はどこで裁判が開かれるのですか。また、どこで裁判を起こした方がよいですか。

Q4−7 租税訴訟はどのように提起するのですか。

Q4−8 租税訴訟にはどのような種類があるのですか。

Q4−9 弁護士はどのようにして選べばよいのですか。

Q4−10 補佐人税理士とはどのようなものですか。補佐人税理士を付けた方がよいですか。

Q4−11 租税訴訟における実際の裁判はどのように進行するのですか。

Q4−12 判決とはどのようなものですか。判決に不満があるときにはどうしたらよいですか。NEW

Q4−13 納税者側が最終的に勝訴した判決にはどのようなものがあるのですか。NEW

納税者が自主的に税務署に協力する以外の、税務署による納税者への接触が広い意味での税務調査になります。

その種類としては、「実地調査」、「反面調査」、「強制調査」があります。

 

解説

 税務署が納税者に対して行う質問等の公権力の行使は、国税通則法第74条の2(平成23年12月2日改正、平成25年1月1日施行)以下に規定されている「質問検査権」をその根拠にしており、この「質問検査権」の行使による税務署の活動が広い意味での税務調査にあたります。

狭い意味で考えますと、税務署側が納税者に対して行う、納税者宅や会社事務所に臨場しての、所得内容の確認行為が税務調査になります。

この納税者宅等に臨場して行う調査を「実地調査」と呼んでいます。

また、納税者から提出された申告書を、税務署内において検算、確認等を行う行為を机上調査と呼んでいます。

この反面調査には、実際に取引先に臨場して行う調査と、書面を郵送して行う文書照会とがあります。臨場する場合は「質問検査権」の行使になりますが、文書照会は法的には協力要請になります。

 

なぜならば、「質問検査権」を行使する場合には、身分証明書および質問検査証の提示が必要とされている(同法第74条の13)のですが、文書照会の場合には、この要件を満たすことができませんので、結果として協力要請にならざるをえないからです。

 

これらご説明してきた調査はひとまとめにして「任意調査」と呼ばれています。ただし「任意」と言われてはいますが、調査を受けるのが任意でよいという意味ではありません。

次に述べる「強制」に対応するという意味で言われているだけで、先に述べたとおり国税通則法(平成23年12月2日改正)で規定されている「質問検査権」に裏打ちされていますし、この「任意調査」に応じない場合には罰則(刑事罰)も規定されています。(同法第127条2号、3号)ので、決して任意ではありません。

ところで、これらの任意調査と別次元に「強制調査」があります。

この「強制調査」は、国税犯則取締法に基づくもので、通常は各国税局の査察部によって行われ、裁判所によって発行される証憑「令状」に基づいて行われます。(同法第2条)

査察調査は、ほかの税務調査とは異なり、管轄というものがありませんので、たとえば東京の法人に名古屋国税局の査察部が強制調査を行うこともあり得ます。

JTRIM法人税.png

A 税務調査は税務署からの実地調査の連絡(事前通知)で始まりますす。。

そして帳簿調査や代表者や従業員に対する質問、 場合によっては取取引引先に対する反面調査や銀行調査によって行われ、 税務署からの調査結果に基づく処分の通知書の到達によって終了します。

 

解説

税務調査は、 通常は税務署からの電話等による事前通知によって納税者 (会社) に知らされ、、臨場の日程を決めて開始されます。

この電話等による連絡が最初に会社に対して行われた場合には、 調査担当者はその後速やかに関与税理士に対しても同様の連絡を行うことになっています。

 

会社、関与税理士、調査担当者の3者の予定をすり合わせて、臨場する日程を決めます。税務署側から当初に伝えられた 日程について、 代表者や関与税理士の予定が既に埋まっていて都合がつかない場合等には、調査担当者に話して日時の変更をすることは全く問題なく、遠慮する必要はありません。

 

ごくまれに、 事前連絡なしにある日突然税務署職員が調査で会社事務所等に臨場することがありますが、 この場合には、 会社代表者 (社長) や関与税理士の都合がつかない場合 (すでに取引先との商談がある場合や、 他社の税務調査の立会いが予定されている場合等)、、その日の調査に応じる必要はありません。後日仕切り直しをして調査を受けることにしてかまいまいまませせんん。

 

ところで、平成23年 12月2日に改正された国税通則法では、その第74条の9で調査の事前通知等に関して新たな規定を設けました。 この規定内容は現行の取扱いからはみ出るようなものではなく、 現状の慣行を追認したものとなっています。

 

臨場調査のはじめには、 まず調査担当者から 「身分証明書」 および 「質問検査証」」 の提示があり、ついで名刺交換が行われることになります。その際、関与税理士は、 「税理士証票」」 を提示することになっています(税理士法第32条) 。

 

その後、 会社概況等の説明が求められ、 会社側は資料等をもとに会社の概況の説明を簡単に行います。

できれば代表者等が応答するのが望ましいのですが、 経理部長や課長が代行しても何ら問題はありません。

 

ついで経理システム等の説明を行った後に帳簿調査が開始されます。

事業規模が大きく、元帳等では事業内容の把握が難しい場合には、取締役会議事録や稟議書等の閲覧が行われ、 調査対象を絞り込むようなことが行われます。 取引内容について説明を求められることがありますが、 経理で対応するのもよいし、場合によっては取引担当者が説明するのもよし、 とにかく正確に事実関係を説明できればOKです。

 

その後必要が生じた場合には、 現場確認や在庫のチェック等が行われることもあります。

また、 取引先や銀行に対して、 いわゆる反面調査が行われることもあります。

このようにして調査が続けられ、 会社が提出した申告書の内容の適否が判断され、 調査担当者が申告書の内容に誤りがあると判断した場合には、 その内容と担当者の見解が会社側および関与税理士に伝えられます。

 

会社側は必要に応じて反論を行い、 関与税理士も意見があれば担当者に伝えます。 その結果、調査担当者の見解が変わる事もあり、 最終的な結論が担当者から出されます。

 

その結論に納得できれば、修正申告の提出等をすることもありますし、 更正の通知を受けることもできます。

 

逆に税務署側の結論に会社側が納得できない場合には、 その旨を伝え税務署から更正通知書が送られてくるのを待ちます。

どちらにしても、 税務調査担当者から結論が告げられ、 それによって実地調査は終了する方向に向かいます。

A 国税庁を頂点として全国に11の国税局と1つの国税事務所所((沖沖縄))があり、その下に524の税務署があります。

 

それぞれに組織の大小は別として、総務系統の部門、個人課税部門、資産課税部門、法人課税部門、徴収部門および対外部との窓口部門があります。 これとは別に国税庁と国税局等には調査部と査察部があります。

 

税務署で調査を担当する部門は、 個人課税部門、 資産課税部門と、法人課税部門になります。

 

一方国税局では、大規模法人(通常は資本金で判断し、原則資本金1億円超の法人が該当します。 ) の税務調査は調査部が、 法人の大小を問わず脱税事案は査察部が担当します。

 

課税部には資料調査課が置かれ、 資本金では大規模法人とはされていない法人や、個人の事案のうち、税務署では扱いにくい複雑な案件や著名法人および著名な個人に対する調査を担当しています。

 

【解説】

 

国税の組織は、国税庁を頂点としたピラミッド組織となっており、それぞれに同様の部門を配置しています。 指揮命令系統はそれぞれの部門 (法人課税、 個人課税等) ごとに国税庁を頂点とし、国税局そして税務署と縦割りになっています。

 

個人課税部門では、 自然人に対する申告所得税を中心に所掌し、 資産課税部門では相続税および贈与税と、 申告所得税のうち譲渡所得の一部について所掌しています。 法人課税部門では法人に対する課税すべて(法人税、消費税、源泉徴収所得税、印紙税やその他諸税) を所掌しています。 ですから、 法人に対する税務調査は法人課税部門の職員が担当し、個人の申告所得税や消費税等の税務調査に関しては個人課税部門が担当し、 個人の相続税や贈与税等の税務調査については、 資産課税部門の職員が担当することになります。

 

国税局に置かれている調査部は大規模法人 (通常は資本金で判断し、 原則資本金1金億1億円超の法人が該当します。 ) の法人税および消費税の調査を担当し、 査察部は法人の大小を問わず脱税事案を担当します。

 

課税部の中に置かれた資料調査課は、 税務署では扱うのが難しい複雑困難事案や、 著名法人、著名人等の調査を担当します。 この資料調査課も個人課税担当、 資産課税担当、 法人課税担当に細分され、 大規模局では、 外国人調査担当や、 国際課税担当も置かれています。

 

税務署においても大規模署においては、 たとえば法人課税部門は、 内部部門、 消費税および間接諸税部門、源泉所得税部門、特別調査部門、一般部門や、特別国税調査官部門、国際調査担当部門等に細分化されています。 また、 個人法人にまたがる調査対象者に対し、 法人税、申告所得税、 相続および贈与税に関して一体的調査を担当する総合調査担当特別国税調査官部門が置かれているところもあります。

 

なお、 源泉所得税に関しては、 どんなに大規模な法人であっても、 国税局の調査部が担当することは無く、 すべて税務署の法人課税部門の源泉所得税部門等が調査を担当することになっています。

国税庁組織図.png

税務署の規模によって置かれている部門の種類や数が異なります

A

調査担当者に事実関係を正確に伝えることが一番大切なことです。

また、調査の過程の記録を正確に作成しておくことです。

 

【解説】

税務調査は数年おき、極端な場合は10年おきくらいに行われます。調査担当者は、会社が何年もかかって行ってきたことを、わずか数日あるいは数週間で調査することになりますから、会社が行ってきた活動のすべてのことを正確に理解するのはしょせん無理なことです。

 

一方、税務上の判断は、事実関係の法令及び通達Yへの当てはめや法令解釈によって行われますから、事実関係の正確な把握は必要不可欠な事項です。したがって調査担当者から求められた事項に関する説明は、特に事実関係に関することは正確に調査担当者に伝える必要があります。

 

当時その事項について記録された色入れな書類をもとに説明する必要があります。調査担当者が求めるのは、単なる言葉による説明だけでなく、客観的な資料に基づく説明です。客観的な資料によって説明を行うことが、調査担当者の誤解を招くことなく正確に事実関係を理解してもらう早道です。

 

(POINT普段から税務調査を意識した疎明資料の作成を心がけてください。また稟議書や企画立案書には後日誤解を招くような事項や表現の記載は極力避けるようにして下さい)

 

調査の途中や終了時に調査担当者と議論になることがありますし、更に最終結論に納得できない場合にはその後税当局と訴訟などで争うことになりますので、調査の過程を正確に記録することが必要です。

 

また、調査の過程で会社側から調査担当者に渡した資料については、何を渡したのかも正確に把握しておかなければなりません。特にコピーを要求されて、帳票などのコピーをした場合には、調査担当者に渡す分だけでなく会社控えもコピーすることを習慣づけてください。後日紛争がおきた場合のために重要な情報(税務署が何を得ているかを知っておくことは、後日議論する場合の重要な要素となります。)の確保をするということを心がけてください。

 

ところで、たまに調査の過程で文書の提出を求められることがあります。特に調査担当者が不正行為だと判断した場合には、往々にして質問顛末書やいわゆる反省文の提出を求め事があります。最近は特に質問顛末書を取ろうとする傾向が強いようです。(質問顛末書については次のQ&A参照)

 

これに従うか否かは基本的に納税者(会社)の自由ですが、そもそもこのような文書の提出を求めるときは、不正行為の判断(いわゆる重加算税の適用)に調査担当者が自信のない場合が多いようです。

 

反省文の提出において特に注意しておきたいのは、不正計算がその額が多額にのぼり青色申告の取消し要因に該当する場合、諸事情を考慮して反省文の提出を理由に青色申告の継続が認められることがありますので、このあたりの事情を理解したうえで調査担当者から文書の提出を求められた場合には、自身の置かれた状況を適格に判断してそれに対処することが必要になります。

 

A

調査の過程において、調査担当者が重要だと判断した事項について、質疑応答形式で記録し作成する調査資料が「質問調書」(あるいは質問顛末書という。)です。

調査において、重要なことだと調査担当者が判断した部分ですので、回答した事項が過不足なく正確に記載されるように注意しなければなりません。

 

【解説】

調査の過程において、調査担当者が行った質問に対する納税者の回答を、後日のために記録する手法の一つです。通常は調査担当者が作成する調査記録(メモ)で対応するのですが、さらにそれを明確化するために調査担当者の判断(ないしは調査担当者の上司の指示)により、質問とそれに対する回答という形式で記録するものです。

 

質問調書を作成する理由としては後日の紛争を想定して(税務訴訟までも考えて)正確な記録を行うということが挙げられます。税務判断に関する重要な事実などを記録することに主眼を置いていますが、ときには「言った、言わない」というような水掛け論を避ける意味合いを持つこともあります。また、これとは別に、ある意味納税者(回答者)に対する精神的圧力となることもあります。

 

質問調書の作成が終わりますと、調査担当者(録取者)が質問調書を読み上げ、記載誤りがないかを尋ねられ、その後質問調書に「上記のとおり相違ありません。」というような文章を書いて署名、押印をすることを求められます。

 

このような場合。内容の正否について即断ができなければ、その旨告げ、時間をもらって検討することは問題ありません。また内容に誤りがあった場合には訂正を求めることも必要です。後日のために、記載された内容を複写するか書き写しておくことも大切なことです。

 

内容に誤りがない場合に、署名押印を促されますが、するもしないも全く納税者の自由です。

 

それは、署名しない場合でも、調査担当者(録取者)がその旨記載すれば、それで質問調書は完成となるからです。

A

税務署でいえば一番トップは署長で、次が担当副所長になります。その下は統括国税調査官、上席国税調査官、国税調査官になります。肩書のない職員は事務官と呼ばれていて調査官の下になります。

また、調査部門のトップが統括国税調査官ではなく、特別国税調査官になる部門もあります。

通常は、特別国税調査官の方が統括国税調査官より上位に位置します。

 

解説

通常の調査を担当する部門は、そのトップが統括国税調査官で通称「統括」(関西では統官と呼びます)と呼ばれています。その配下に「上席国税調査官」及び「国税調査官」、事務官がいます。税務大学校を卒業して最初に税務署に配属された人たちは事務官になります。

 

調査に臨場するのは通常は上席以下で、企業規模により単独で臨場する場合もあり、複数で臨場する場合もあります。

 

調査のまとめの時点では通常統括が登場してきます。複雑困難事案となってしまった場合には担当副署長が登場する場合もあります。

 

調査結果の部内決済は事案の規模により異なりますが、統括官が決済できる事案、担当副所長が決済する事案、署長決済を要する事案に区分することができます。

 

特別国税調査官(通称「特官」)の場合は以下「上席」、「調査官」、「事務官」になります。このラインの場合の指揮命令系統は署長、特官となります。特官の中に統括特官と呼ばれている方入る場合は、署長、統括特官、特官となります。

 

ところで、国税局調査部の場合は、調査部門のトップは統括国税調査官となり、以下「総括主査」「主査」「国税調査官」となります。

 

局の統括国税調査官は税務署の副所長クラスと同位かそれ以上になります。また主査は税務署の統括と同位になります。

 

なお、他の官庁の職名は当然に国税の世界とは異なり、たとえば調査官の肩書きの方がかなり上位のことが多々ありますので混同は禁物です。

 

A

税務調査は、その最終局面において調査担当者から税務署側の結論が告げられ、非違がある場合には次いで修正申告書の提出のしょうようが行われます(国税通則法(平成 23年12月2 日改正)第74条の11第 3項前段)。そのしょうようについて応諾するか拒否をするかを、納税者(会社)が調査担当者に告げることによって終局を迎えます。修正申告書を提出する場合は、修正申告書を提出し、追加税額の納付を行い、後日加算税の賦課決定書と延滞税のお知らせが来て 、これらの付帯税を納付すると完了します 。

 

非遣があると告げられたものの、修正申告書の提出に応じない場合には、税務署長から更正の通知書が送付されてきて、一応実地調査は終了し、第 2 ラウンドに突入することになります 。

 

なお、非違が認められない場合(調査是認の場合)には、その旨の通知書が税務署長から送られてきます(国税通則法(平成 23年12月 2 日改正)第74条の11第 1項) 。

 

解説

税務調査が終盤になると、調査担当者から調査結果が告げられます。

それに納得した場合には、修正申告のしょうように従い修正申告書を提出するのが通常ですが、親会社に対する説明等必要がある場合には、更正処分を受けることも可能です。

 

修正申告書の提出と、更正処分の遣いは、修正申告書の提出の場合は、その後の行動(異議申立て、審査請求、税務訴訟)が一切できなくなるということです。

 

当然に更正処分を選択した場合にはこれらの 事項を行う権利が生まれます。また、修正申告の場合には、税務調査の結果について、特にその理由については、公式な文書による説明はないことになります。

 

一方、更正処分の場合は、法人税や申告所得税の場合で、青色申告を行っていれば、その処分内容について理由付記が行われますので( 法人税法第 130条2項、所得税法第 155条2項)、税務署側の公式な理由説明が得られることになります。

 

また、そもそも税務署側の結論に納得できず争おうと思っている場合には、必ず更正処分を受けなければなりません。

 ところで、修正申告を行うにしろ更正処分を受けるにしろ追加納税が必要な事態になれば、これを納税しなければならないのですが、この追加納税額の納期限は、修正申告の場合には その修正申告書の提出日が法定納期限になります(国税通則法第35条2項 1号)。

 

一方、更正処分の場合には、更正通知書が発せられた日の翌日から1 ヵ月後が法定納期限になります(同 項2号)。

 

さらに、修正申告の場合も更正処分の場合も、追加納税額が発生した場合には、これらの本税に対して加算税が課されます。通常のミスや法令解釈誤り等の場合には過少申告加算税が (同法第65条)、不正計算による場合には重加算税が課されます(同法第 68条)。これら加算税は賦課課税となりますので、加算税の賦課決定通知書が税務署から送られてくることになります(同法第32条3項)。

 

また、この追加納税に関しては、本来の納期限から延滞税がかかることになりますが(同法 第60条2項)、過少対象の修正申告や更正処分の場合には、当初の法定納期限から 1年が経過した段階で一旦ストップになります。その後追加納付に係る法定納期限から追加の延滞税の 計算が新たに始まることになります(同法第  61条 1項)。

 

したがって、税務調査による追徴額を速やかに納付が行えれば問題はないのですが、資金繰り等の関係で直ちに納付ができない場合には、延滞税が再スター卜することを考慮して、修正申告か更正処分かを選択することも重要になります。

 

なお、不正計算による重加算税対象所得に対応する追加納税額には、延滞税の 1年打切りはありませんので、くれぐれも不正行為はしないようにしましょう。

 

ところで、非遣なしで調査が終了する場合ですが、国税通則法(平成  23年 12月2日改正)では、第74条の1 1第 1項で文書による「更正決定等をすべきと認められない旨の通知の通知」を規定しましたので、書面による調査是認の通知が行われることになりました。

まず最初に、書かれている内容を確認します。調査の過程でおおよその処分内容に ついては調査担当者等から説明がされていたと思いますが、貴社が青色申告 をしていれば、青色の理由付記といわれるものが行われていますので、その記載内容と説明を受けていた内容とが一致しているかを確認します 。

 

 法人税や申告所得税以外の税目(たとえば源泉徴収所得税や相続税)では、現状では理由付記がされない場合もありますので、所得金額や税額について、調査の際に説明を受けた金額と一致するかを確認します 。

 

次にそもそも今回の税務署側の結論に、貴社(貴者)が納得できるものなのか否 かによって対応が異なります 。 

 

内容に納得できるのであれば、後は淡々と納税を済ませればそれで終了となります。 

 

税務署側の今回の処分に納得できない場合には、異議申立て等を行うことになり ます。

 

解説

 

税務署からは署長名で更正処分通知 書等が送られてきます(国税通則法第  28条 1項)。

 

通常は簡易書留郵便で送達が行われます。処分に納得できない場合には次のステップに進む ことになりますが、その手続きには期限があり、その起算日は貴社(貴方)がこの通知書の送達

を受けた日が基準になりますので、何年何月何日に誰が受領したかは確認をしておかなければなりません。

 

次にその処分の通知書に書かれた内容を確認します。調査の際に担当者から説明されていた金額および内容と一致しているのかを調べます。青色の更正の場合には理由付記がされていますのでその記載内容も確認します。ところで、法人税等の青色の理由付記は更正処分の法律要件になっていますので(法人税法第   130条2項、所得税法第 155条 2項)、その内容に不備があった場合には、更正処分自体の取消し原因となります。

 

したがってその記載が間違っていないか、かつ十分に説明が行われているかも慎重に確認をしなければなりません。一方、

源泉徴収所得税や相続税等の場合の理由付記は、仮にされていたとしてもそもそも法律要件ではなく行政サービスとして晋かれていますので、その内容等にたとえ不備があったとしても取消し要因とはなりませんが、事前に説明がされていた内容と同一の理由であるか否かは、今後の対応のときに必要なポイントになりますので、しっかりと確認をすることになります。

 

確認後に今回の処分に納得できた場合には、同封されている納付書にしたがって本税および加算税の納税を行い、その後地方税関係の処理を行うことになります。また後日送られてく

る延滞税のお知らせにしたがって延滞税を納付することにより、今回の税務調査は終了することになります。

 

 一方、今回の調査結果に納得できない場合には(そもそも納得できないから修正申告をせず、更正処分を受けたのでしょうが。)、次のステップ(異議申立て等)に移行することになります。

 

なお、平成23年度税制改正により、処分の理由付記については平成25年1月1日以後に行われる処分からすべての処分について理由が付されることとなります。(国税通則法第74条の14)

(ただし個人の白色申告者等に対する更正等にかかる理由付記についてはすでに記帳義務、帳簿保存義務が課されている者を除き、記帳・帳簿等保存義務の拡大(平成26年1月)に併せて実施することになります。)

 

 

Q2-1 訴願前置主義とはどのようなことですか。

A

税務行政においては、行政庁(税務署側)の行政処分等(更正決定等)に不服がある(納得できない)場合に、直ちに裁判所にその処分等の取消しを求める(税務署を訴える)ことはできず、その前に異議申立てや審査請求を行わなければならない制度のことをいいます(不服申立前置制度ともいいます(国税通則法第115条1項柱害本文)。)。

 

解説

 

税務行政は大勢の納税者を対象に行われており、かつ法に則り画一的な処理を行っていくものであるため、更正処分等に対する不服も全国的に見れば大量に発生する可能性があります。そのため、不服処理についても、すべてを最初から裁判所に委ねてしまうと収拾のつかない事態を招くことにもなりかねません。

 

また、税務は専門的で複雑な知識が要求され、そのうえ裁判所における審理は慎重に行われますので、最初から裁判所に委ねてしまうと、迅速な処理が難しいという状況も招きかねません。そこで裁判所に委ねる前に専門的知識や豊富な経験を有する行政庁による救済を図る制度を設けるほうが、納税者にとっても、また司法側にとっても適当であるため、設けられたのがこの訴願前置方式(不服申立前置制度)です。

 

更正処分に不服がある場合には、原処分庁(調査を行った税務署等)に対する異議申立て、あるいは法人税法・所得税法が規定する青色の場合の異議申立てをパスしての国税不服審判所に対する審査請求を経て(異議申立てをして棄却をされた場合には、審査請求を経た後)から裁判所への訴訟申立てとなります。

 

 

 

 

Q2-2 更正の理由付記について教えてください。

法人税および申告所得税のうちの事業所得や不動産所得等に関しては、青色申告という制度があります(法人税法第121条以下、所得税法第143条以下)。

 

この青色申告を行っている者に対し更正処分を行う場合には、その処分に関して、課税庁側(税務署長)はその理由を記載しなければいけないという規定になっており(法人税法第130条2項、所得税法第155条2項)、その規定に基づいて行われる処分理由の開示が更正の理由付記と呼ばれているものです。

 

解説

 

法人税法および所得税法には青色申告という制度が規定されています。帳簿書類の作成を義務として、その見返りとして各種の恩典が与えられています。たとえば損失金の翌期以降への繰越し(法人税法第57条、所得税法第70条1項)や所得税の場合には専従者給与(所得税法第57条)や青色申告控除(租税特別措置法第25条の2)が、法人税法では租税特別措置法に規定する各種準備金の損金算入(同法第55条以下)がその例として挙げられます。

 

この恩典の1つに調査がらみとして、推計課税の不適用(法人税法第131条、所得税法第156条)と更正処分の際の理由付記があります。青色申告の更正の場合に、この更正の理由付記がされていなかったりあるいは不十分であった場合には、それだけで更正処分の取消し理由となります(課税処分すべてが理由付記不備で取り消されます。)。

 

この理由付記の制度は、課税庁(税務署)の判断の慎重性や合理性を担保してその窓意性を抑制し、また処分の理由を相手方に知らせて不服の申立てに便宜を与えるものであるとされています。

 

また、更正処分に不服がある場合の手続きとして、異議申立て(国税通則法第75条1項1号)、そして審査請求(同条B項)という連続した手続きがあるのですが、法人税法・所得税法が規定する青色申告の場合は、異議申立てを飛ばして(経ずして)審査請求に直接進む道も認められています(同条4項1号)。

Q2-3 異議申立てを行う際の期限や進め方について教えてください。

 

異議申立ては、更正処分等の通知を受領した日の翌日から2ヵ月以内に行わなければなりません(国税通則法第77条1項)。

 

異議申立ては原処分庁にその処分に対する見直しを要求し、原処分の取消しを求めるものですから、納税者は処分の取消しを求める理由を述べる必要があります。通常は書面によるやり取りが中心になりますが、場合によっては税務署側が再度の調査を行うこともあります。また、必要に応じて納税者から新たな資料を提出することもできます。

 

原則として、異議審理庁(異議申立てを受けた税務署)は異議申立てが行われた日から3カ月以内に異議決定を行うことになっています(同法第75条5項)。

 

解説

 

更正処分等の通知書は通常は簡易書留で送られてきます。その通知書を受領した日の翌日から起算して2ヵ月間が異議申立てを行うことができる期間になります。したがって、税務署から更正処分等の通知書が送られてきたら、その通知書の受領日はきちんと記録をしておくことが重要になります。この2ヵ月が過ぎてしまうと、異議申立ては行うことができず、原処分は確定してしまいます。

 

更正処分に納得できない場合には、原処分庁(税務署等更正処分等を行った所)に異議申立てを行うことになります。通常は税務署に用意されている異議申立書に必要事項を記載して行います。なお、この用紙は国税庁のホームページからも入手することができます。

 

異議申立ては、受けた処分の全部の取消しを求めることもできますが、そのうちの一部の取消し(処分を受けた内容のうち、その−部だけに不服がある場合)を求めることもできます。

 

異議申立書の記載事項で一番のポイントは、納得できない理由を明確に記載することにつきます。なお、理由付記がされていない処分(たとえば源泉徴収所得税の納税告知処分)については、当局の処分理由が公式には明らかにされていませんので、調査時の担当者の説明等に基づき処分理由を推測して、それに対する納得できない理由を記載していくことになります。

 

異議申立てで注意しておかなければならない大事なことは、異議申立ては、原処分の延長であるということです。言い換えれば、調査が再度行われる可能性があるということです。健前は納税者救済ということになっていますが、その負担は納税者が負うことになり、また、原処分時の調査では把握されていなかった事項も、異議調査で把握される可能性があるということになります。

 

異議申立時の調査は、原処分と同じく国税通則法に規定されている質問検査権の行使により行われます。したがって、不答弁等については罰則規定が適用されることになりますので、注意が必要です。

 

異議申立書を受理した異議審理庁は受理した日から3ヵ月以内に異議決定を行うことになります。3ヵ月を経過しても異議決定が行われない場合には、異議申立人は、そのまま異議決定がされるのを待つもよし、さもなければ異議決定がされないまま、審査請求に進むこともできます。

 

なお、異議申立てに関する異議審査にかかる手数料等はありません(無料です。)。


 

Q2-4 異議申立書の書き方について教えてください。

A

 

次の設例により書き方をご説明します。

 

<設例>

東京都千代田区丸の内1-1-1に本社を置く当社(株式会社凸凹商事)は平成24年1月27日に、麹町税務署長から平成22年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度に関しての平成24年1月26日付の更正処分通知書および過少申告加算税の賦課決定通知書を受領しました。

 

そこでは交際費と認められる金額2,000万円が所得に加算されるという処分内容が記載されていました。当社でIまこの2,000万円は販促費と認識しており、交際費ではないと考えていますので、異議申立てを行いたいと思っております。異議申立書の記載をお願いいたします。


解説

 

①には異議申立書を提出する日にちを記載します。
 

②には、異議申立てを行う税務署名(原処分が国税局長によって行われた場合には、当該国 国税局長によって行われた場合には、当該国税局名)を記載します。

 

③④には貴社(処分を申し立てる者)の住所および名称を記載します。

 

⑤には貴社の代表者の住所および氏名を記載します。

 

⑥には代理人を選任する場合に、その者の住所および氏名を記載します。

 

⑦には、原処分を行った官庁名(税務署名)を記載します。

 

⑧には、通知書に記載されている日付を、通知書に記載された年月日欄に、通知書を受領した日を、通知書を受けた年月日欄にそれぞれ記載します。

 

⑨には原処分に閏する内容をそれぞれ記載します。本事例の場合には、法人税および更正に ます。〇をし、対象年分等欄には「自平成22年4月1日至平成23年B月31日」と記載し、加算税 の部分では過少申告加算税(a)に〇をします。

 

⑩には本件では全部取消しを求めますので、「1」に〇をします。

 

⑪は取消しを求める理由について記載します。このスペースに言ききれないときには「別紙のとおり」等記載して、適宜別の用紙に記載して、それを添付することになります。

 

⑫は併せて提出する資料等があればこれを記載し、この申立書に添付して提出することになります。本事例の場合には、代理人を選任しましたので、委任状を添付することになります。

 

⑬は、処分を受けた後に納税地変更があった場合に記載する欄で、その旨と原処分を受けた際の納税地等を記載することになります。本事例の場合には記載は不要です。

 

Q2-5 異議申立てを行うにあたって注意しなければならない事項について教えてください。

まず、異議申立書を提出する際には期限を厳守することです。期限までに異議申立書の作成が間に合わない場合(取消し理由の記載ができない場合等)には、最低限必要な事項だけを記載してでも、期日までに提出しなければなりません。


次に、異議申立てで原処分の取消しを追求するのか、それとも審査請求や訴訟までをも考えているのか、戦略を明確にすることが重要です。そしてその戦略に沿って進めていくことが大事です。

 

解説

 

異議申立ては、更正処分の通知書を受領した日の翌日から2ヵ月以内に行かなければ、期限余過となり、無効となってしまいますので、どんなことがあっても期限内に異議申立書を提出しなければなりません。資料等がそろわなくて完璧な申立書が作成できなくても、とにかく最低限のものを、いったん期限内に提出すればよいのです。

 

軽微な記入漏れ等は提出後に補正を行うことができ、また未記入のものは、その後追加提出することで補うことができますので、不完全でも期限厳守で提出してしまうことです。提出先は、納税地を管轄する税務署(国税通則法第75条1項1号、処分者が国税局長の場合には、当該国税局(同項2号イ))になります。

 

異議申立てを行う際には代理人を選任することができ、またすべての手続きを代理人に依頼してしまうこともできます。複数の代理人を選任することもできます。

 

異議申立てを訴訟への通過点として考えている場合には、異議申立ての段階でどのような主張をするのか、そして今までの調査で把握されていない資料や情報が存在する場合に、どの範囲までの資料等を異議申立ての段階で開示するのかを、将来をにらんで判断する必要があります。

 

特に、訴訟もやむなしと考えている場合には、訴訟を担当するであろう弁護士や補佐人税理士となるであろう税理士とも十分な打合せをしておく必要があります。

 

Q2-6 異議申立てを行うに際しては、更正処分等された税額は納税をしておかなければいけませんか。

当初処分(更正処分等)によって税額が生じている場合には、仮にこれに不服があったとしても、一旦は納税すべき税額が確定していますので、納税をする必要があります。

 

 

解説

 

当初処分が行われると、その後異議申立てや審査請求等により仮にその税額が取り消されたとしても、取り消されるまではその増加税額はいったんは確定していますので、これを納税しておかないと滞納という状況になってしまいます。滞納状況になってしまいますと、延滞税がかかることになります。

この延滞税の金額は原則として年14.6%になりますので(国税通則法代60条2項本文)、これを放置しておくとものすごい金額になってしまいます(単利計算ではありますが。)。

 

また当然に滞納ですので、滞納処分も粛々と進められていきます。ただし、この滞納処分は、異議申立てや審査請求、租税訴訟を行っている場合には、差押さえまでは進むことがありますが、競売等強制換価処分はされないことになっています(延滞税はかかります。)。

 

そうはいっても資金に余裕のある限り延滞税の発生を防ぐためにも、納税をしておくことが望ましいことになります。逆に納税を行っておくと、将来原処分が取消された際(こちらの言い分が認められたとき)には納税額に対して還付加算金が付されることになります(同法第58条)。

 

なお、納税資金の目処がつかない場合には、担保を提供することにより延滞税の税率を下げることができる場合がありますので、その工夫をしておくことも重要になります(還付加算金の計算には影響は及ぼしません。)。

 

 

Q3-1 異議決定書を受け取りましたが、その結論に納得できません。どのようにしたらよいですか。

A

異議決定の内容に納得できない場合には、国税不服審判所に審査請求することができます(国税通則法第75条3項)。審査請求を経ないで直接裁判所に訴えを起こすことはできませんので(同法代115条1項柱書本文)、裁判を睨んでいる際にも、審査請求を行わなければなりません。


 

解説

 

税務署からは著長名で異議決定通知書等が送られてきます。通常は簡易書留郵便で送達が行われます。異議決定に納得できない場合には次のステップに進むことになりますが、その手続きには期限があり、その起算日は貴社(貴方)がこの通知書の送達を受けた日が基準になりますので、何年何月何日に誰が受領したかは確認しておかなければなりません。

 

審査請求に関する期限は、異議決定書を受領した日の翌日から起算して1ヵ月になっています(国税通則法第77条2項)。更正処分から異議申立てへの期間よりも短くなっていますので勘違い等をしないよう、十分に気をつけましょう。

 

次にその異議決定書に書かれた内容を確認します。特に当初処分に理由付記のない処分(源泉徴収所得税に係る納税告知処分等)の場合には、異議決定書に書かれている理由が、初めて当局が犯した公式な見解になりますから、その理由をよく吟味しなければなりません。

 

場合によっては、調査時に説明を受けた理由とは異なることが書かれていることもあり得ます。今後課税当局と争っていく場合には、とりあえずこと異議決定書に書かれている理由に対して反論を加えていくことになります。

 

なお、租税訴訟は総額主義が採られていますので、理由の差替えは自由自在になっています。更正処分等によって増えた税額が結果として正しい税額を超えているか否かが勝負となるのですが、そうはいっても増額税額に対する不服は、その増加理由に対して反論をしていくことになりますので、審査請求に際しては、異議決定の理由に対して反論をすることから始まります。したがって異議決定書に書かれている処分理由については十分に検討をする必要があります。


また、審査請求にかかる手数料等の費用は訴訟とは違って一切ありません。

 

 

 

Q3-2 国税不服審判所とはどのようなところですか。

A

国税不服審判所は、国税庁の特別の機関ではありますが、一応、税務署や国税局からは独立した組織となっており、国税に関する処分についての審査請求に対する裁決(判断)を行う組織です。本部と、北は北海道(札幌)から南は沖縄(那覇)まで全国に存在する12の支部と、その支部の下位にある7つの支所から構成されています。

 

各審判所は、審判官、副審判官および審査官や、管理課の事務担当者らで構成されており、審判官および副審判官からなる3人の合議体で議決された議決書を基に議決を行います。


 

解説

 

国税不服審判所は昭和45年に国税庁の付属機関として発足し、当時は「協議団」と呼ばれていましたが、その後に組織改革が行われ現在の形となりました。

 

現在の本部および各支部並びに支所の所在地と管轄は次のとおりです(参考:国税不服審判所ホームページ)。

 

各審判所は、審判官、副審判官および審査官や、管理課の事務担当者らで構成されていますが、ここに勤務する者は国税庁や各国税局からの出向者がほとんどであり、外部から弁護士や税理士、大学の教授等が審判官として登用されてはいるものの、まだ全国で20名程度で、その大半は国税出身者で占められているのが現状です。

 

ただ、本部や東京、大阪の首席審判官(トップ)は司法関係者が務めています。なお、この状況を改善するように今後審判官の半数程度を外部からの登用者にするように計画されています。

 

審判所の内部組織は、所長(首席審判官)をトップにその下に次席審判官を置き、たとえば東京のような大規模審判所の場合には部制をとっていますので、ついで部長審判官を置いています。

 

部は「法規審査部」と「審判部」に別れ、それぞれ中に部門を置いています。部門は審判官と副審判官、そして彼らの補助者である審査官で構成されています。また、審査請求書の受理や裁決書の発送等内部事務等を行うために、管理課が設置されています。

 

「法規審査部」は裁決害等の内容について審査等を行い、実際の事案に関して審理や合議を行い裁決書の基となる議決害の作成をするのは「審判部」となります。合議は3人の審判官ないし副審判官で行われ、事案ごとに担当審判官が決められ、その補助者として通常は審査宮が配置されています。

 

なお、審判所の支所には審判部だけがあり、法規審査部や管理課は置かれていません。

 

 

Q3-3 審査請求の流れについて教えてください。

A

審査請求書の提出によって始まり、担当審判官を介して原処分との書面によるやり取りが行われ、その後裁決へと進んでいきます。書面(反論書)の提出の際には、当方の主張を裏付けつ証拠資料の提出をすることもできますし、逆に原処分庁が課税証拠として提出した資料を閲覧することもできます(国税通則法第96条2項)。


なお、審判所の審理には職権探知主義が採用されています。したがって、質問検査権が審判官に与えられていますので(同法第97条1項)、関係者に対していわゆる反面調査と呼ばれているような調査が行われることがあります。
 

解説

 

審査請求は審査請求書を納税地を管轄する国税不服審判所に期限内に提出することにより開始されます(国税通則法第75条3項、第87条1項)。

 

審査請求書が提出された国税不服審判所は、原処分庁から答弁書が提出されるとその事案を担当する審判官を指定します(同法第94条)。原則は事案を順番に審判部の審判官に割り振ることになっていますので、どの審判官が担当するかはふたを開けてみるまでわからないことになります。

 

審査請求人には、国税不服審判所から担当審判官のお知らせと原処分庁から提出された答弁書が送付されてきます(同法第63条6項)。そしてこの答弁書に対する反論を行うことにより、審査請求が進んでいくことになります。(当然に原処分庁からも、こちらの主張に対する反論書が提出されることになり、これもまた担当審判所から審査請求人に写しが送付されてきます。

 

原処分庁から提出された反論書等に対しても再反論等を行うことができ、そしてこれが繰り返されていきます。)。両者の主張が出揃うと、担当審判官を含む3人の審判官ないしは副審判官からなる合議体において合議をし、その事案に対する議決(結論)を出します。そしてこの議決書に基づいて裁決が行われることになります。

 

これが大雑把な流れですが、この過程において適切な反論を行うために、審査請求人に認められた権利として閲覧請求権があります(同法第96条2項)。これは、原処分庁から担当審判官に提出された課税根拠となる資料に関して閲覧をすることができるという権利です。さらに文章ではうまく自分の主張が担当審判官に伝わらないと思われるときには、口頭意見陳述を行うことも認められています。

 

これらの行為は審査請求人本人が行うこともできますし、逆に審査請求人は全く表に出ず、すべてを代理人に任せることもできます。極端な場合には、審査請求人は一度も担当審判官と接触することなく、裁決を迎えることも可能です。

 

また、担当審判官には結論を導き出す手段として関係者に対する質問検査を行う権限が与えられています(同法第97条1項)。これを職権探知主義といい、このために与えられた公権力が質問検査権です。当然にこの審判官に与えられた質問検査権には、質問検査に応じない者に対する罰則規定が規定されていますので(同法第127条本文)、間接強制力が働くことになります。

 

ただし、審査請求人にだけはこの罰則規定の適用がありませんので(同条ただし書。納税者救済の制度ですから適用がないのは当然ですが。)、自分に都合の悪い質問や検査に対しては答える必要はありません。間接強制がない代わりに、不答弁等の場合には、その質問等に対応する審査請求人の主張は採用されないことになります(同法第97条4項)。

Q3-4 審査請求書の書き方について教えてください。

次の設例により書き方をご説明します。

《設例》

東京都千代田区丸の内1-1-1に本社を置く当社(株式会社凸凹商事)は平成24年1月27日に、麹町税務署長から平成22年4月1日から平成23年3月31日までの事業年度に関しての平成24年1月26日付の更正処分通知書および過少申告加算税の賦課決定通知書を受領しました。そこでは交際費と認められる金額2,000万円が所得に加算されるという処分内容が記載されていました。当社ではこの2,000万円は販促費と認識しており、交際費ではないと考えていましたので、異議申立てを平成24年2月1日に行ったところ、平成24年4月25日に麹町税務署長から4月24日付けの棄却の異議決定害を簡易書留で郵送され、それを受領しました。審査請求書を行いたいので審査請求書の作成をお願いいたします。


 

解説

 

①には審査請求書を提出する日にちを記載します。

②③には貴社(処分を申し立てる者)の住所および名称を記載します。

④には貴社の代表者の住所および氏名を記載します。

⑤には、代理人を選任する場合には、その者の住所および氏名を記載します。

⑥には、原処分を行った官庁名(税務署名)を記載します。

⑦には、原処分に係る通知書に記載されている日付を、通知書に記載された年月日欄に、原処分に係る通知書を受領した日を、通知を受けた年月日欄にそれぞれ記載します。

⑧には原処分に関する内容をそれぞれ記載します。本事例の場合には、法人税および更正に〇をし、対象年分等欄には「自平成22年4月1日至平成23年3月31日」と記載し、加算税の部分では過少申告加算税(6)に〇をします。

⑨には異議申立てをした日を異議申立年月日欄に記載し、異議決定を受けた場合には「1」に異議決定を受けずに審査請求する場合には「2」に〇をします。本事例の場合は異議申立年月日欄に平成24年2月1日と記載し、「1」に〇をつけ、異議決定害謄本の送達を受けた年月日欄に平成24年4月25日と記載します。

⑩は異議申立てをしていない場合に記載をする欄で、その理由に該当するところに〇をすることになります。本事例では異議申立てをしていますので、記載はしません。

⑪では本件では全部取消しを求めますので、「1」に〇をします。

⑫では取消しを求める理由について記載します。このスペースに書ききれないときには「別紙のとおり」等記載して、適宜別の用紙に記載して、それを添付することになります。

⑬では併せて提出する資料等があればこれを記載し、この申立害に添付して提出することになります。本事例の場合には、代理人を選任しましたので、委任状を添付することになります。

 

Q3-5 審査請求について特に注意しなければならない事項を教えてください。

まずは審査請求書の提出に関して、期限厳守ということが挙げられます。 ついで審半所の審理および運営は争点主義的運営によって行われていますので、原処分の内容および処分理由に対して、こちらの言い分すなわち主張をぶつけていくことになりますが、その際にこの争点がかみ合わないと(争点を明らかにできないと)スムーズには進みません。主張は事実認定に齟齬があるのか、法律解 があるのか、法律解釈に相違があるのか等明確にして行う必要があります。調査担当者の態度良くない等の感情論は通用しないので、論理的に武装をする必要があります。

 

また、法律の内容自体(憲法違反という主張)や通達の内容を争う等の場合には、国税不服審判所では判断ができなかったり、あるいは非常に八一ドルが高いので訴訟に持っていくしかない事項があります。

 

さらに、訴訟を睨んでいる場合には、先を見据えて主張および証拠の提出を行うことが重要になります。

 

解説

 

審査請求は異議決定後1カ月以内に行わなければならないことになっています(国税通則法77条2項)。期限を徒過してしまうと、門前払い(却下)されてしまいますので期限厳守が第1ポイントです。

 

証拠資料等が集まらず十分な主張ができない場合等であっても、とにかく審査請求書は期限までに提出してしまうことです。その後補正記入や、追加提出等をすることが可能ですので、完壁を期す必要はなく期限内に提出することが重要です。

 

次に審理は争点主義的運営によって行われますので、争点を整理し、的確な主張をするよう 心がけます。感情論は通用しないので、肝に銘じておきましょう。しかしながら、あくまで争点的運営であって本質は総額主義ですので、将来の訴訟を睨んでいる場合には、主張および証拠資料の提出については、将来訴訟をお願いするであろう弁護士や、補佐人税理士となる税理士と綿密な打ち合わせをすることをお勧めします。

 

争点主義的運営で、本質は総額主義だということは、裁決書の最後の部分に記される「原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料によっても、これを不相当とする理由は認められない。」というこの決まり文句によっても明らかに感じるところです。

 

ところで、審判所による審理および裁決において、「法律(税法)の規定が憲法に抵触するから違法だ。したがって、違法な規定に基づいて行われた原処分は取り消されなければならない。」というような主張に関しては、審判所は裁判所と違い憲法判断はできないことになっていますので、取り上げられることはありません(憲法違反という主張に関しては無視されることになります。)。

 

また通達に関してですが、通達は法律ではないので審判所の裁決において取り上げることは

できます。しかしながら審判所において通達と異なる裁決をしようとする場合には、事前に国税庁長官に対して通知しなければなりません。国税庁長官はこの通知に関して異なる見解を持つ場合(通達を維持しようとする場合)には、国税審議会に諮って、その結果に基づいて審判所に指示をすることになっています。

 

したがってこのように手間暇をかけることは担当審判官らにとっては現実的ではなく、現状においては大半の審判官等審判所の構成員が国税からの出向者で占められていることを踏まえると、通達に反した裁決が出ることを望むべくもないということになります。

 

 

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