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税務調査を法的に考える

社長にも知っていただきたい税務調査を法的に考える

 目次

Q   1 憲法からみれば税務調査の位置づけは何でしょうか

Q   2 質問検査権とは

Q   3 質問検査権と受忍義務の関係はどうなっているか

Q   4 反面調査とは

Q   5 質問検査権の範囲は

Q   6 無予告調査の要件とは

Q パソコンを触りたいと言われたら

Q 8 調査官の身分証明書の携帯義務

Q 9 事前通知方法が変更されました

Q 10 税務調査は犯罪の捜査ではありません

Q 11 不当な税務調査がなされた場合は

Q 12 留置きとは

Q 13 留置きを要求されたら

Q 14 これは税務調査かそうでないか(1)

Q 15 これは税務調査かそうでないか(2)

Q 16 税務調査の対象期間は何年(1) 

Q 17 税務調査の対象期間は何年(2) 

Q 18 修正申告と更正の違いは何か(1) 

Q 19 修正申告と更正の違いは何か(2) 

Q 20 事前通知内容以外の調査は可能か

Q 21 再調査ができる場合とは

Q 22 反面調査ができる場合とは

Q 23 反面調査に対する反論根拠は何か

Q 24 税務調査は納税者が立ち会う必要があるか(1)

Q 25 税務調査は納税者が立ち会う必要があるか(2)

Q 26 青色申告以外にも理由附記

Q 27 理由附記はどこまで拡大されたのか

Q 28 質問応答記録書とは

Q 29 質問応答記録書への署名はしなければならないのか

Q 30 税務調査終了時の手続き(1)

Q 31 税務調査終了時の手続き(2)

Q 32 通達に基づく課税は許されるのか

Q 33 通達を根拠とした否認指摘に反論するには

Q 34 税務署からの電話連絡は税務調査か

Q 35 無予告調査でも事前通知は必要

Q 36 無予告調査はどう対処するか

Q 37 印紙税調査の実態は

Q 38 税理士が提出する調査終了の際の手続に関する同意書

      とは

Q 39 忙しいことを理由に税務調査を延期できるのか

Q 40 調査対象年分に誤りがあれば調査年分は延びるのか

Q 41 個人の通帳を見せる必要があるか

Q 42 個人通帳を要求された場合どう答えるか

Q 43 書面添付制度の活用

Q 44 意見聴取とは

Q 45 守秘義務がある業種の税務調査範囲はどこまでか

Q 46 過少申告加算税は修正申告すれば必ずかかる

Q 47 事前通知後の加算税

 

 

 

 

 

 


 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 1 憲法からみれば税務調査の位置づけは何でしょうか
 

税務調査と一般的に言いますが、そもそも税務調査とは、何のために定められているのでしょうか。

税務調査(=質問検査権)を規定する国税通則法をみる前に、憲法ではどうなっているのでしょうか。

憲法では、租税に関し2つの規定を明文化しています。

憲法第30条(納税の義務)

 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。

 この規定により、憲法はまず納税の義務と合わせて租税法律主義の原則の双方を包含していると考えられます。

憲法第84条(課税の要件)

 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

 ここでは租税法律主義が明文化されています。これら憲法の規定を受けて、はじめて国税通則法を理解することができるのです。

 国税通則法の条文を挙げれば

国税通則法第16条(申告納税制度)

 納付すべき税額が納税者のする申告により確定することを原則とし、その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長又は税関長の調査したところと異なる場合に限り、税務署長又は税関長の処分により確定する方式をいう。

 結論として、法律に従った納税の義務があり、申告納税制度を担保するために、言い換えれば、申告内容が正しいかどうかを確認するために、税務調査が存在するということなのです。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 2 質問検査権とは
 

税務調査とは、国税職員に質問検査権を与え、はじめて成立するものです。では、質問検査権とは具体的に何でしょうか。

 国税通則法第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)・・・

 国税庁、国税局若しくは税務署(以下「国税庁等」という。)又は税関の当該職員(税関の当該職員にあっては、消費税に関する調査を行う場合に限る。)は、所得税、法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(税関の当該職員が行う調査にあっては、課税貨物(消費税法第二条第一項第十一号 (定義)に規定する課税貨物をいう。第四号イにおいて同じ。)又はその帳簿書類その他の物件とする。)を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。

 このことからわかるように、まず質問検査権とは、帳簿書類などの提示や提出を求めることができる権利だとわかります。

 また、ここでは帳簿書類に限定されておらず、その他の物件とあります。その他の物件がどの範囲なのかについては、解釈論であり、議論の余地はあると思いますが、税務調査の成り立ちから考えるに、下記と考えれば間違いないといえます。

 税務調査=納税者が自主的に申告した課税標準または税額等が正しいか確認すること
 その他の物件=課税標準または税額等の計算が正しいか確認するために必要なものすべてとなります。

 例えば、その他の物件に棚卸資産が含まれるのか考えてみると、棚卸金額によって課税標準(=所得金額)や税額が変わりますから、棚卸資産も税務調査の対象になると考えるべきなのです。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 3 質問検査権受忍義務の関係はどうなっているか

税務調査の範囲・権限を規定する法律は、国税通則法に規定されています(なお、平成24年以前は各個別税法に規定されていました)。

 具体的には、国税通則法第74条の2以降をみると、税務調査を実施する権限である質問検査権等が規定されているわけです。

 では、よく言われる受忍義務とはどこに規定されているのでしょうか。受忍義務とは法律用語ではないので、法律をいくら探しても見つけることはできません。

 国税職員=質問検査権
←→ 納税者=罰則規定

 という関係から、納税者には税務調査において、受忍義務があると解されているのです。 具体的に法律ではどうなっているかというと。

国税通則法第127条
 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五万円以下の罰金に処する。

二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)、第七十四条の四(第三項を除く。)、第七十四条の五(第一号二、第二号二、第三号二及び第四号二を除く。)若しくは第七十四条の六(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者

三 第七十四条の二から第七十四条の六までの規定による物件の提示又は提出の要求に対し、正当な理由がなくこれに応じず、又は偽りの記載しくは記録をした帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)を提示し、若しくは提出した者

 つまり、簡単に言いますと、税務調査を拒否したり、嘘をつけばこの罰則に抵触するということなのです。これらを総じて、一般的には税務調査受忍義務と呼んでいます。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 4 反面調査とは
 

よく反面調査という言葉を使いますが、反面調査とは法律用語ではありません。反面調査は、質問検査権を規定する法律に含まれているものですから、質問検査権=税務調査の1つ方法ということになります

 国税通則法第74条の2(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)

一 所得税に関する調査 次に掲げる者

ハ イに掲げる者に金銭若しくは物品の給付をする義務があつたと認められる者若しくは当該義務があると認められる者又はイに掲げる者から金銭若しくは物品の給付を受ける権利があつたと認められる者若しくは当該権利があると認められる者

二 法人税に関する調査 次に掲げる者

ロ イに掲げる者に対し、金銭の支払若しくは物品の譲渡をする義務があると認められる者又は金銭の支払若しくは物品の譲渡を受ける権利があると認められる者となっています。

つまり、質問検査権の規定では、取引先や銀行などにも調査をする権限を付与しているのです。
それでは、反面調査の法的要件は何でしょうか? 

国税通則法第74条の2には調査について必要があるときはと規定されているのみです。この必要があるときについては、解釈の余地がありそうです。

回を改めて述べてみたいと思います。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 5 質問検査権の範囲は

税務調査で常に問題になるのが、税務調査官に何を見せなければならないかだと思われます。

 国税通則法の質問検査権を規定する法律(第74条の2)には、「その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件(その写しを含む。次条から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)において同じ。)の提示若しくは提出を求めることができる。」と明記されています。つまり、「帳簿書類」「その他の物件」を税務調査官に見せなければならないというわけです。

 ここにいう、帳簿書類とは非常にシンプルで、税務申告書やその付表(明細を含む)、決算書やそのもととなった元帳の類であり、この判断に迷うことは実務上ないかと思います。

 一方で、その他の物件ですが、これについては通達等にも明示がなく、判断に迷うところです。

 さてここで、税務調査はそもそもどういう目的で行われるものだったでしょうか。そこから考えてみると、このその他の物件を明確にすることができそうです。

 税務調査とは、申告納税制度を担保するために行われるものです。つまり、各法人や個人事業主の方が、自らの所得・税額を計算して、自ら申告をする。その申告内容に誤りがないかを税務署が確認しなければ、脱税等が横行してしまい、申告納税制度が維持・担保できないというわけです。

 ここまで考えると、税務調査で提示義務があるその他の物件とは、所得および税額を確認するために必要なものすべてと判断することができます。

 例えば、棚卸資産(在庫)の確認。期末棚卸の金額が正しく計上されていなければ、売上原価を正しく計上することができず、それによって所得および税額に影響することになります。ですから、在庫の確認を求められた場合は、税務調査官に見せなければならない、というわけです。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 6 無予告調査の要件とは
 

平成24年以前に実施される税務調査においては、無予告調査の法定要件はありませんでした。つまり、無予告調査を行うかどうかは、課税調査の裁量に委ねられていたということです。しかし、国税通則法の改正・施行により、無予告調査の要件が法定されることになりました。

国税通則法第74条の10(事前通知を要しない場合)

「前条第1項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第3項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第1項の規定による通知を要しない。」となっています。

あくまでも、税務調査は事前通知があることを原則としていますが、上記条文の要件が法定化されたのです。

無予告調査があった場合は、調査官に対し、国税通則法第74条の10のどの要件に該当するのですか?をまず確認する必要があります。

 該当しないのであれば、行われた無予告調査は違法行為になりますと主張することができるというわけです。

 なお、この条文の解釈については、税務調査の手続きを定める通達である「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)」の4−7から4―10まで、例示を含めて細かく書かれています。

参考のために以下に記載しておきます。
 

第3章 法第74条の9〜法第74条の11関係(事前通知及び調査の終了の際の手続)

第2節 事前通知に関する事項

(4−1〜4−6は省略)

(「その営む事業内容に関する情報」の範囲等)

4-7 法第74条の10に規定する「その営む事業内容に関する情報」には、事業の規模又は取引内容若しくは決済手段などの具体的な営業形態も含まれるが、単に不特定多数の取引先との間において現金決済による取引をしているということのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえないことに留意する。

(「違法又は不当な行為」の範囲)

4-8 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為」には、事前通知をすることにより、事前通知前に行った違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、事前通知後は、このような行為を行わず、又は、適法な状態を作出することにより、結果として、事前通知後に、違法又は不当な行為を行ったと評価される状態を生じさせる行為が含まれることに留意する。

(「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合の例示)

4-9 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。

  • (1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第127条第2号又は同条第3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
  • (2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。
  • (3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。
  • (4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。
  • (5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。

(「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合の例示)

4-10 法第74条の10に規定する「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(3)までに掲げるような場合をいう。

  • (1) 事前通知をすることにより、税務代理人以外の第三者が調査立会いを求め、それにより調査の適正な遂行に支障を及ぼすことが合理的に推認される場合。
  • (2) 事前通知を行うため相応の努力をして電話等による連絡を行おうとしたものの、応答を拒否され、又は応答がなかった場合。
  • (3) 事業実態が不明であるため、実地に臨場した上で確認しないと事前通知先が判明しない等、事前通知を行うことが困難な場合。

税務調査を法的に考えるQ&A

 Q 7 パソコンを触りたいと言われたら

 
税務調査において、以前よりは減少しましたが、税務調査官よりパソコンを触らせてくださいと依頼されることがあります。

こう言われた場合、どう対応すればいいでしょうか。

 パソコン自体に何のデータも保存されていなければ問題ないのでしょうが、実際のところ、見積りや請求書をメールでやり取りしている会社も多いことでしょう。また、顧客・取引先とメールでやり取りしているのが通常でしょうから、パソコンを触らせてくれという調査官の言い分も理解できます。

 一方で、納税者側としては、調査官にパソコンを直接触られると何を見られるかわからない、という思いが生じます。

 税務調査における質問検査権には、調査官がパソコンを直接触ることまで要請されるのでしょうか。

 この点については国税庁のホームページに、下記のQ&Aが公開されています。

税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

 この中に、下記のQ&Aがあります。

問5

 提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのでしょうか。

帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくこととなります。一方、提出については、通常は、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただくこととなります。また、電磁的記録そのものを提出いただく必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もありますので、ご協力をお願いします。

 最後の「調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)」については、法的に権限がないからこそ「お願い」「ご協力」と記載しているわけです。

 このように、調査官からパソコンを触らせてくれと要請されても、必要なものがあればパソコンの画面で見せます」「必要があればプリントアウトして提出しますと答えればいいということなのです。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 8 調査官の身分証明書の携帯義務

税務調査が開始される初日、調査官の方から「身分証明書」の提示があるのが通常です。調査官が提示するのは、見開きの定期入れのようなもので、その両面に身分証明書が入っています。

 では、この身分証明書、何が根拠になっているのでしょうか。

 国税通則法第74条の13(身分証明書の携帯等)

国税庁等又は税関の当該職員は、第七十四条の二から第七十四条の六まで(当該職員の質問検査権)の規定による質問、検査、提示若しくは提出の要求、閲覧の要求、採取、移動の禁止若しくは封かんの実施をする場合又は前条の職務を執行する場合には、その身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があつたときは、これを提示しなければならない。

となっています。

 つまり、この法律規定から、調査官は税務調査を実施する際には、身分証明書を携帯しなければならず、納税者もしくはその税務代理人である税理士から身分証明書を見せてくださいと言われれば、提示しなければならなりません。

 調査官が身分証明書を自ら提示しない場合、こちらから提示を求めても、携帯していないケースもあり得ます。公務員が公権力を行使するわけですから、警察官などと同じように、身分およびその権限を示す身分証明書を携帯していないというのは、相当に問題です。

 このようなケースは、上記法律から逸脱するものであり、明確に違法手続きの税務調査に該当するというわけです。

 税務調査が開始される段階で、きちんと調査官の身分証明書を確認するようにしてください

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 9 事前通知方法が変更されました

平成26年7月1日から、税務調査の事前通知方法が変更になりました。具体的には、税務代理権限証書が様式変更になり、チェックを入れておくと、税理士に先に事前通知がなされることで統一されました。

  平成26年7月から施行されている条文を確認しておくことにします。

国税通則法第74条の9第5項 では

「納税義務者について税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、当該納税義務者への第1項の規定による通知は、当該税務代理人に対してすれば足りる。」

              となっています。


税理士法第34条第2項では

「前項の場合において、同項に規定する申告書を提出した者の同意がある場合として財務省令で定める場合に該当するときは、当該申告書を提出した者への通知は、同項に規定する税理士に対してすれば足る。」 となっています。

     これらの変更に関する、通則法通達の改正は下記です。


    3章 法第74条の9〜法第74条の11関係(事前通知及び調査の終了の手続) 

 

第5節 税務代理人に関する事項

 

(税務代理人を通じた事前通知事項の通知)

7-1 実地の調査の対象となる納税義務者について税務代理人がある場合における法第74条の9第1項の規定による通知については、同条第5項に規定する「納税義務者の同意がある場合」を除き、納税義務者及び税務代理人の双方に対して行うことに留意する。

 ただし、納税義務者から同項各号に掲げる事項について税務代理人を通じて当該納税義務者に通知して差し支えない旨の申立てがあったときは、当該税務代理人を通じて当該納税義務者へ当該事項を通知することとして差し支えないことに留意する。

  ()

1.  1 同項に規定する「納税義務者の同意がある場合として財務省令で定める場合」には、平成26630日以前に提出された税理士法第30条《税務代理の権限の明示》に規定する税務代理権限証書に、同項に規定する同意が記載されている場合を含むことに留意する。 

2.  2 ただし書きによる場合においても、「実地の調査において質問検査等を行わせる」旨の通知については直接納税義務者に対して行う必要があることに留意する。 

3.  3 法第74条の96項に規定する「代表する税務代理人を定めた場合」、当該代表する税務代理人に対して通知すれば足りるが、同項に規定する「代表する税務代理人を定めた場合」には、平成27630日以前に提出された税務代理権限証書に、代表する税務代理人が定められている場合も含むことに留意する。

 

(税務代理人からの事前通知した日時等の変更の求め) 

7-2 実地の調査の対象となる納税義務者について税務代理人がある場合において、法第74条の92項の規定による変更の求めは、当該納税義務者のほか当該税務代理人も行うことができることに留意する。
 

(税務代理人がある場合の実地の調査以外の調査結果の内容の説明等) 

7-3 実地の調査以外の調査により質問検査等を行った納税義務者について税務代理人がある場合における法第74条の112項に規定する調査結果の内容の説明並びに同条第3項に規定する説明及び交付については、同条第5項に準じて取り扱うこととしても差し支えないことに留意する。 

(法に基づく事前通知と税理士法第34条《調査の通知》に基づく調査の通知との関係) 

7-4 実地の調査の対象となる納税義務者について税務代理人がある場合において、当該税務代理人に対して法第74条の91項の規定に基づく通知を行った場合には、税理士法第34条《調査の通知》の規定による通知を併せて行ったものと取り扱うことに留意する。 

(一部の納税義務者の同意がない場合における税務代理人への説明等)

7-5法第74条の9第5項及び法第74条の115項の規定の適用上、納税義務者の同意があるかどうかは、個々の納税義務者ごとに判断することに留意する。 

  () 例えば、相続税の調査において、複数の納税義務者がある場合における法第74条の9第5項及び法第74条の115項の規定の適用については、個々の納税義務者ごとにその納税義務者の同意の有無により、その納税義務者に通知等を行うかその税務代理人に通知等を行うかを判断することに留意する。

 また同時に、事務運営指針も改正になっています。

調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)

のうち、「第2章 基本的な事務手続及び留意事項」「2 事前通知に関する手続」が該当箇所になります。 


2 事前通知に関する手続  

 

(1) 事前通知の実施

 納税義務者に対し実地の調査を行う場合には、原則として、調査の対象となる納税義務者及び税務代理人の双方に対し、調査開始日前までに相当の時間的余裕をおいて、電話等により、法第74条の91項に基づき、実地の調査において質問検査等を行う旨、並びに同項各号及び国税通則法施行令第30条の4に規定する事項を事前通知する。

 この場合、事前通知に先立って、納税義務者及び税務代理人の都合を聴取し、必要に応じて調査日程を調整の上、事前通知すべき調査開始日時を決定することに留意する。

 なお、事前通知の実施に当たっては、納税義務者及び税務代理人に対し、通知事項が正確に伝わるよう分かりやすく丁寧な通知を行うよう努める。 

 ()

         1 納税義務者に税務代理人がある場合において、当該税務代理人が提出した税務代理権限証書に、当該納税義務者への事前通知は当該税務代理人に対して行われることについて同意する旨の記載があるときは、当該納税義務者への事前通知は、当該税務代理人に対して行えば足りることに留意する。

         2 納税義務者に税務代理人が数人ある場合において、これらの税務代理人が提出した税務代理権限証書において、代表する税務代理人の定めがあるときは、これらの税務代理人への事前通知は、当該代表する税務代理人に対して行えば足りるが、当該代表する税務代理人以外のこれらの税務代理人(以下「他の税務代理人」という。)への事前通知は行われないため、他の税務代理人へ通知事項を伝えるよう当該代表する税務代理人に連絡することに留意する。

         3 納税義務者に対して事前通知を行う場合であっても、納税義務者から、事前通知の詳細は税務代理人を通じて通知して差し支えない旨の申立てがあったときは、納税義務者には実地の調査を行うことのみを通知し、その他の通知事項は税務代理人を通じて通知することとして差し支えないことに留意する(手続通達7-1)。

 

(2) 調査開始日時等の変更の求めがあった場合の手続

 事前通知を行った後、納税義務者から、調査開始日前に、合理的な理由を付して事前通知した調査開始日時又は調査開始場所の変更の求めがあった場合には、個々の事案における事実関係に即して、納税義務者の私的利益と実地の調査の適正かつ円滑な実施の必要性という行政目的とを比較衡量の上、変更の適否を適切に判断する(手続通達4-6)。 

  () 税務代理人の事情により、調査開始日時又は調査開始場所を変更する求めがあった場合についても同様に取り扱うことに留意する(手続通達7-2)。  

 

(3) 事前通知を行わない場合の手続

 実地の調査を行う場合において、納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁、国税局又は税務署がその時点で保有する情報に鑑み、 

  •  違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ 
  •  その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ 

があると認める場合には、事前通知を行わないものとする。

 この場合、事前通知を行わないことについては、法令及び手続通達に基づき、個々の事案の事実関係に即してその適法性を適切に判断する(手続通達4-74-84-94-10)。 

  ()

        1 複数の納税義務者に対して同時に調査を行う場合においても、事前通知を行わないことについては、個々の納税義務者ごとに判断することに留意する。 

        2 事前通知を行うことなく実地の調査を実施する場合であっても、調査の対象となる納税義務者に対し、臨場後速やかに、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「調査対象者の氏名又は名称及び住所又は居所」、「調査担当者の氏名及び所属官署」を通知するとともに、それらの事項(調査の目的、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間等)以外の事項についても、調査の途中で非違が疑われることとなった場合には、質問検査等の対象となる旨を説明し、納税義務者の理解と協力を得て調査を開始することに留意する。
 なお、税務代理人がある場合は、当該税務代理人に対しても、臨場後速やかにこれらの事項を通知することに留意する。 

       となっています。


 ここに記載ある通り、「当該税務代理人が提出した税務代理権限証書に、当該納税義務者への事前通知は当該税務代理人に対して行われることについて同意する旨の記載があるときは、当該納税義務者への事前通知は、当該税務代理人に対して行えば足りることに留意する。」となります。

 簡単にいえば、税務代理権限証書に「調査の通知は税理士に連絡」とあれば、税理士に事前通知がくることになったわけです。 

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 10 税務調査犯罪の捜査ではありません

 

税務調査の手続きを規定する国税通則法の中に、次のような法律規定があります。
 

国税通則法第74条の8(権限の解釈)

第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない

 この条文は、質問検査権を規定した法律の直後に定められている、いわゆる包括規定ですが、この条文の通達がないため、解釈については統一見解が出されていないのが現状です。しかし、税務調査の実務上は、非常に重要な手続き規定であることに間違いありません。絶対に知っておかねばならない条文なのです。

 辞典で調べてみると、
「調「捜は下記の意味になります。

「調:ある事項を明確にするためにしらべること

「捜 :捜査機関が、公訴の提起・維持のため、犯人および犯罪事実に関する証拠を発見・収集すること

 つまり、この条文が意味することは、税務調査というのは、調査先を犯罪者と決めつけて証拠収集するものではなく、帳簿等を見て所得・税額の計算上、不明点があるからそれを明確にするために、質問または検査をするというのが本質というわけです。

 税務調査の現実を鑑みるに、この点を混同している調査官が見受けられるのが現状です。このような税務調査手法で税務調査を推し進めてきた場合は、法律(国税通則法)違反の疑いがあるといえます。
 

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 11 不当な税務調査がなされた場合は 

税務調査を行う調査官に質問検査権の権限が与えられ、かつ納税者には受忍義務(罰則規定)があることをもって、税務調査は法的に成り立っているのですが、実はその反面、質問検査権の範囲を逸脱した(不当な・違法な)税務調査が行われた場合の罰則規定はありません。

 ここで、違法性のある税務調査が行われてしまった場合、何を根拠に税務署に訴えを起こせばいいのでしょうか。

 このような場合、税法ではなく、国に対する違法請求になりますから、下記の法律が適用根拠になります。

国家賠償法第1条

「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」

 この規定は当然に課税当局に対しても適用になります。

 国家賠償法を根拠にする要件としては、「故意又は過失」ですから、調査官が質問検査権を逸脱するような言動を行った場合には、税務調査の現場で是正を促すとともに、「これ以上不当な税務調査を行う場合には、故意又は過失があったとして、国家賠償法による訴えも辞さないですが、よろしいですか?」と歯止めをかけることが大事になります。

 これは私たち税理士にとって頭の中に入れておかなければならないことだと思います。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 12 留置きとは
 

税通則法改正前から、税務調査の実務において、調査官に対して帳簿書類等(コピーなどの控えを含む)を貸し出すという「慣習」がありました。

 平成25年以降に施行された、税務調査の手続き等を定めた国税通則法において、この慣習が法定化されました。


国税通則法第74条の7(提出物件の留置き

「国税庁等又は税関の当該職員は、国税の調査について必要があるときは、当該調査において提出された物件を留め置くことができる。」

 つまり、税務調査において調査官は法律規定に則り、帳簿書類等を「留置く」ことができる ようになったわけです。
 


 法律規定は上記のみですが、この法律には合わせて、通達が規定されています。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)
2−1(「留置き」の意義等)

(1) 法第74条の7に規定する提出された物件の「留置き」とは、当該職員が提出を受けた物件について国税庁、国税局若しくは税務署又は税関の庁舎において占有する状態をいう。

 ただし、提出される物件が、調査の過程で当該職員に提出するために納税義務者等が新たに作成した物件(提出するために新たに作成した写しを含む。)である場合は、当該物件の占有を継続することは法第74条の7に規定する「留置き」には当たらないことに留意する。

(注)

 当該職員は、留め置いた物件について、善良な管理者の注意をもって管理しなければならないことに留意する。


(2) 当該職員は、令第30条の3第2項に基づき、留め置いた物件について、留め置く必要がなくなったときは、遅滞なく当該物件を返還しなければならず、また、提出した者から返還の求めがあったときは、特段の支障がない限り、速やかに返還しなければならないことに留意する。

 この通達からわかることは、

留置きとは、調査官が帳簿書類等を税務署に持って帰る(預かる)こと

・調査官は留置いた物件に対して返還義務がある

ということです。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 13 留置きを要求されたら

 

 国税通則法第74条の7(提出物件の留置き )の規定をみると、調査官は強権的に、帳簿書類等を留置くことができるように読めます。

 一方、この法律規定には事務運営指針が定められており、留置きがどこまで強権的なのかは、この規定を読む必要性があります

調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)

第2章 基本的な事務手続及び留意事項

3 調査時における手続

(4) 帳簿書類その他の物件の提示・提出の求め

調査について必要がある場合において、質問検査等の相手方となる者に対し、帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)の提示・提出を求めるときは、質問検査等の相手方となる者の理解と協力の下、その承諾を得て行う。

 

(注)

質問検査等の相手方となる者について、職務上の秘密についての守秘義務に係る規定(例:医師等の守秘義務)や調査等に当たり留意すべき事項に係る規定(例:宗教法人法第84条)が法令で定められている場合においては、質問検査等を行うに当たっては、それらの定めにも十分留意する。

 

(5) 提出を受けた帳簿書類等の留置き

提出を受けた帳簿書類等の留置きは、

質問検査等の相手方となる者の事務所等で調査を行うスペースがなく調査を効率的に行うことができない場合

2)

帳簿書類等の写しの作成が必要であるが調査先にコピー機がない場合

3)

3) 相当分量の帳簿書類等を検査する必要があるが、必ずしも質問検査等の相手方となる者の事業所等において当該相手方となる者に相応の負担をかけて説明等を求めなくとも、税務署や国税局内において当該帳簿書類等に基づく一定の検査が可能であり、質問検査等の相手方となる者の負担や迅速な調査の実施の観点から合理的であると認められる場合

など、やむを得ず留め置く必要がある場合や、質問検査等の相手方となる者の負担軽減の観点から留置きが合理的と認められる場合に、留め置く必要性を説明し、帳簿書類等を提出した者の理解と協力の下、その承諾を得て実施する。

 なお、帳簿書類等を留め置く際は、別途定める書面(以下「預り証」という。)に当該帳簿書類等の名称など必要事項を記載した上で帳簿書類等を提出した者に交付する。


 また、留め置いた帳簿書類等については、善良な管理者の注意をもって文書及び個人情報の散逸、漏洩等の防止にも配意して管理する。

 おって、留め置く必要がなくなったときには、遅滞なく、交付した「預り証」と引換えに留め置いた帳簿書類等を返還する。

 ここに明記されている通り、留置きというのは何も「強制」ではなく、「質問検査等の相手方となる者の理解と協力の下、その承諾を得て行われる」ものであるということです。また、留置きは無条件に行われるものではなく、やむを得ず留め置く必要がある場合や、質問検査等の相手方となる者の負担軽減の観点から留置きが合理的と認められる場合に行われるものであることは、税理士として知っておく必要があります。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 14 これは税務調査かそうでないか(1)

 

 税務調査を考える上で根本的な問題は、そもそも税務署の行為自体が「税務調査に該当するのか」「しないのか」という区分  にあります。具体的には、納税者に対して税務署から問い合わせの連絡(電話や郵送物)があった場合などで問題になります。

税務調査かどうかの
区分によって、結果的に

(1)回答義務があるかどうか

(2)加算税が賦課されるかどうか

の大きく2つの対応が変わってくるのです。今回では
(1)について書きます。(2)については別の回で述べることにします。

 

調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等について(事務運営指針)」では以下のように述べています。(一部抜粋)

第2章 基本的な事務手続及び留意事項

 1 調査と行政指導の区分の明示

 納税義務者等に対し調査又は行政指導に当たる行為を行う際は、対面、電話、書面等の態様を問わず、いずれの事務として行うかを明示した上で、それぞれの行為を法令等に基づき適正に行う。

 

(注)1

 調査とは、国税(法第74条の2から法第74条の6までに掲げる税目に限る。)に関する法律の規定に基づき、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的その他国税に関する法律に基づく処分を行う目的で当該職員が行う一連の行為(証拠資料の収集、要件事実の認定、法令の解釈適用など)をいうことに留意する(「手続通達」(平成24年9月12日付課総5−9ほか9課共同「国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達」(法令解釈通達)をいう。以下同じ。)1−1)。

 当該職員が行う行為であって、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものは、調査には該当しないことに留意する(手続通達1−2)。


 まず、税務調査なのか税務調査ではない行政指導」なのか区分することが大事ですが、この事務運営指針を読んでわかることは、

① 区分については税務署側が明示すべきものであること

 したがって、わからない場合は税務署に聞けばいいですし、また税務署が明示しない場合は事務運営指針違反になります。

② 明らかな税務調査以外は行政指導に該当

 したがって、「お尋ね」などはすべて行政指導に該当します。
 

また回答義務があるかどうかですが、

税務調査については受忍義務があるため回答義務があることになり、行政指導については任意のため回答義務はないということになります。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 15 これは税務調査かそうでないか(2)


 「税務調査該当するのか」「税務調査該当しないのか?」の区分を加算税の観点から解説しましょう。まず、ここでなぜ加算税が関係してくるのかというと、当初申告に誤りがあり、結果として修正申告をする場合であっても、加算税が課されるかどうかが違うからです。


税務調査によって修正申告のしょうようによって修正申告書を提出した場合は加算税が課されます。

税務調査によってではなく自主的に修正申告書を提出した場合は加算税が課されません。


 自主的に修正申告をすれば加算税が課されないというのは、国税通則法第65条第5項が根拠条文となります。

 では、次のような場合はどうでしょう

当初申告を提出しましたが、2週間後に税務署から顧問税理士に電話がありました。

 先生、提出いただいた顧問先の申告書の件ですが〇〇〇この部分って間違っていませんか?

 こう言われて申告書の控えを見たところ、確かに間違っている・・・修正申告だ! この状況で提出した修正申告に加算税は課されるのでしょうか。

 確かに、税務署からの指摘で誤りに気付きました。これを自主修正と呼べるのでしょうか。

この疑問に答えるのに、下記通達は、税務調査に「該当しない 」場合を列挙しているので参考になります。

国税通則法第7章の2(国税の調査)関係通達の制定について(法令解釈通達)

1−2(
「調査」に該当しない行為

当該職員が行う行為であって、次に掲げる行為のように、特定の納税義務者の課税標準等又は税額等を認定する目的で行う行為に至らないものは、調査には該当しないことに留意する。また、これらの行為のみに起因して修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は源泉徴収に係る所得税の自主納付があった場合には、当該修正申告書等の提出等は更正若しくは決定又は納税の告知があるべきことを予知してなされたものには当たらないことに留意する。

また、税務署が電話で誤りの指摘をするという行為は、「質問検査権の行使税務調査」なのでしょうか。

 

(1)

提出された納税申告書の自発的な見直しを要請する行為で、次に掲げるもの。

 

 提出された納税申告書に法令により添付すべきものとされている書類が添付されていない場合において、納税義務者に対して当該書類の自発的な提出を要請する行為。

 

 当該職員が保有している情報又は提出された納税申告書の検算その他の形式的な審査の結果に照らして、提出された納税申告書に計算誤り、転記誤り又は記載漏れ等があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。

(2)

提出された納税申告書の記載事項の審査の結果に照らして、当該記載事項につき税法の適用誤りがあるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して、適用誤りの有無を確認するために必要な基礎的情報の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて修正申告書又は更正の請求書の自発的な提出を要請する行為。

(3)

納税申告書の提出がないため納税申告書の提出義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(事業活動の有無等)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて納税申告書の自発的な提出を要請する行為。

(4)

当該職員が保有している情報又は提出された所得税徴収高計算書の記載事項の確認の結果に照らして、源泉徴収税額の納税額に過不足徴収額があるのではないかと思料される場合において、納税義務者に対して源泉徴収税額の自主納付等を要請する行為。

(5)

源泉徴収に係る所得税に関して源泉徴収義務の有無を確認する必要がある場合において、当該義務があるのではないかと思料される者に対して、当該義務の有無を確認するために必要な基礎的情報(源泉徴収の対象となる所得の支払の有無)の自発的な提供を要請した上で、必要に応じて源泉徴収税額の自主納付を要請する行為。

 本通達から判断すると、税務署からの誤りの指摘であったとしても、税務調査に該当しない限り、加算税は課せられません

ですから、どこまでの行為が「調査ではなく」どこから「調査なのか」区分することが大事です。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 16 税務調査の対象期間は何年(1)

税務調査の実務では、通常3年」になっている調査対象期間ですが、否認項目が出てくれば5年」に遡られるケースもあり、脱税だと7年  」と言われるケースもあります。

税務調査における遡及年数は、実際のところ何年が正しいのでしょうか? 税務調査における遡及年数を定めた法律はありません。一方で、(増額)更正の年数を定めた法律があります。

  税務調査において、誤りがあった場合は、修正申告もしくは(税務署による)更正になるわけですから、調査年数は更正の期間に依存すると考えられます。

 更正の除斥期間は、下記条文が原則となっています(一部省略)。


国税通則法第70条

 「次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から5年を経過した日以後においては、することができない。

となっています。

 つまり
原則として、更正は「5年」できるのですから、税務調査の対象年数は「5年 」になります。

 なお、下記のような一部例外の税目があります。

法人税で純損失等に関する更正:
9年(通則法第70条(2))

法人税で移転価格税制に関する更正:6年(措置法66条の4(17))

贈与税:6年 (相続税法36条(1))

となっています。
それ以外はすべて、「5年」です

 つまり、通例では
3年となっている調査期間も、本当は5年間遡ることができるというわけなのですが実務上3年 で済んでいる(税務署が済ませている)だけです。

 ですから、税務調査の事前通知で、当初
3年と言われていたものが、否認項目が出てきた関係で、調査官から「調査期間を5年にします 」と言われれば、断ることができない、というわけです。

 

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 17 税務調査の対象期間は何年(2)

税務調査の対象期間は、「原則は5年です。」(税目ごとに若干異なりますので、ご注意ください)しかし、これには1つ例外があります

国税通則法第70条第4項

 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税についての更正決定等又は偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額についての更正は、第1項又は前項の規定にかかわらず、第1項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、当該各号に定める期限又は日から7年を経過する日まで、することができる。

    となっています。

つまり、「偽りその他不正の行為」、簡単にいえば、「脱税」事案に関しては、税務調査で最大「7年 」遡れるというわけです。

 逆にいえば、「
偽りその他不正の行為」が無いにもかかわらず、7年分の修正申告を求められたら更正は5年しかできないのだから、修正申告も5年しかする必要がない と断ることができます。

 このような例は、減価償却で過去から誤っていた事案で指摘されやすいので、注意が必要です。

 「
更正の除斥期間調査対象期間」ということですので、ぜひ除斥期間は正しく理解しておくことが必要です。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 18 修正申告更正の違いは何か(1)

 

税務調査の結末は、何も誤りがなければ申告是認」ですが一方で、誤りがあった場合は、「修正申告」と「更正  」の2つに分かれることになります。

税務調査で誤りがあった場合、実務上修正申告するケースがほとんどです。

では「修正申告」と「更正」の違いは何でしょうか。

国税通則法第74条の11(調査の終了の際の手続)

 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

 まず、原則として、税務調査で誤りがあった場合は、
更正税務署による処分)と規定されています。また、この後の条文では、

 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正 の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。

と規定されており、あくまでも
更正の説明をする際に、調査官が「修正申告を提出してもいいですよ」とすすめることができるということです。

税務調査を法的に考えるQ&A

Q 19 修正申告更正の違いは何か(2)


 税務調査に誤りがあった場合、実務上はほとんどのケースで修正申告を提出することになるのですが、これは「更正税務署による処分」なので、何か悪いことでもしているかのような、漠然としたイメージからきていることもあります。

 実際のところ、
更正は税務署による処分には間違いないのですが、更正をされたからといって、税務署から以後、不利益な取り扱いをされることなどありませんし、下記のように金額的負担はすべて同じです。

修正申告更正で同じ事項】

・本税は同額です。

・加算税も同額です。

・延滞税も同額です。

 修正申告更正の違いは、1つだけです。それは、

修正申告不服申立てをすることができないのに対して

更正不服申立てをすることができるということです。

 修正申告はあくまでも、納税者が自ら提出するもの(国税通則法第19条)ですから、修正申告の内容に不満があっても、不服申立てをすることができません。

 しかし、
更正は処分(国税通則法第24条)ですから、その内容に不満がある場合、不服申立てをすることができます。

国税通則法第75条(国税に関する処分についての不服申立て)

国税に関する法律に基づく処分で次の各号に掲げるものに不服がある者は、当該各号に掲げる不服申立てをすることができる。

 これだけの違いしかない
修正申告更正ですから、安易に修正申告を提出することなく税務調査における否認指摘に納得できない場合などは更正を選択することも検討の余地があります。

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