税務調査を法的に考えるQ&A
Q 10 税務調査は犯罪の捜査ではありません
税務調査の手続きを規定する国税通則法の中に、次のような法律規定があります。
国税通則法第74条の8(権限の解釈)
第74条の2から前条まで(当該職員の質問検査権等)の規定による当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。
この条文は、質問検査権を規定した法律の直後に定められている、いわゆる包括規定ですが、この条文の通達がないため、解釈については統一見解が出されていないのが現状です。しかし、税務調査の実務上は、非常に重要な手続き規定であることに間違いありません。絶対に知っておかねばならない条文なのです。
辞典で調べてみると、「調査」と「捜査」は下記の意味になります。
「調査」:ある事項を明確にするためにしらべること
「捜査」 :捜査機関が、公訴の提起・維持のため、犯人および犯罪事実に関する証拠を発見・収集すること
つまり、この条文が意味することは、税務調査というのは、調査先を犯罪者と決めつけて証拠収集するものではなく、帳簿等を見て所得・税額の計算上、不明点があるからそれを明確にするために、質問または検査をするというのが本質というわけです。
税務調査の現実を鑑みるに、この点を混同している調査官が見受けられるのが現状です。このような税務調査手法で税務調査を推し進めてきた場合は、法律(国税通則法)違反の疑いがあるといえます。