税務調査に関する役立つ知識
まずは本題に入る前に申告納税制度に関する義務を担保する制度についてから
始めていきたいと思います。
(以下はできるだけ平易なことばで簡潔にということを主眼に置きましたので説明不
十分な点が多々あることをあらかじめお断りします。)
第1回 事業所得者の記帳義務、帳簿等保存義務について
Q1 私は、個人事業者ですが、帳簿はつけなくてはいけないのですか?
A かつては事業所得などの合計が300万円以下の白色申告者は、帳簿を作って売上や
経費を記帳する義務がありませんでしたが、2014年(平成26年)1月からは事業や不動産
貸付等を行うすべての白色申告者に記帳義務が課されるようになりました。
●青色申告者の場合
「青色申告者は、事業所得の金額や不動産所得の金額が正確に計算できるように、
仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な書類を備えてすべての取引を正規の簿記の原
則に従い、整然とかつ明瞭に記録しなければならない。」(所得税法148条①)となっ
ています。
つまり複式簿記の原則によって 帳簿に記録する義務 があります。ただし、簡易
な方法 による記帳(簡易簿記)も可能です。
●白色申告者の場合
上記に述べたように改正になりました。
条文では「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての白色申告者
は、一定の帳簿を備え付けてこれにこれらの所得を生ずべき業務に係るその年の取引のうち
総収入金額及び必要経費に関する事項を簡易な方法により記録し、かつ、その帳簿や関係書類
を整理して保存しなければならない」(所得税法231の2①)となっています。
Q2 帳簿は何年間保存しておかなければならないのですか?
A 帳簿等の保存期間を白色申告の記帳対象者と青色申告者を比較すれば次の
ようになります。
区分 | 記帳対象者 | 青色申告者 |
帳簿・決算関係書類 | 7年 | 7年 |
現金預金取引等関係書類 | 5年 | 7年(前々年所得が300万円以下の人は5年) |
その他証ひょう書類 | 5年 | 5年 |
参考・・・保存しなくてはならない帳簿書類とはいわゆる帳簿のほかに、棚卸表、決算
書、 決算整理に関して作成した書類、取引に関して相手方から受け取った注文書、
契約書,送り状、領収書、見積書等や自分の作成した書類でその写しのあるものは
その写し(簡単にいえば、売上の請求書控え、領収書控えの類)のことです。
第2回 記帳義務違反、帳簿等保存義務違反をした場合の制裁等及び課税調査権について
Q3 帳簿を記帳しなかったり、保存しなかったりした場合になにか不利益はありますか?
A 青色申告の方が記帳、帳簿等保存義務に違反した場合青色申告が取り消される場合があります。
また、記帳、帳簿等保存義務に違反した白色申告の方に対しては課税庁(税務署等)は調査に際して推計課税を行うことができることになっています。
(所得税法156条)
Q4 税務調査はどういった権限で行われるものですか?
A 調査について必要があるときは、課税庁(税務署等)は納税義務者、源泉徴収票提出義務者等、取引関係者等に対し質問し、または帳簿書類等の検査を行うことができるという質問検査権という権限が法律上認められています。(所得税法234条、法人税法153条他)
また、課税庁(税務署等)の調査に対して不答弁・虚偽の報告をした場合は、刑事罰が科されます。
第3回 税務調査の遡求年分と加算税について
Q5 税務調査は、何年間さかのぼって調査が可能ですか?
A 通常の場合は5年(以前は3年でしたが、平成16年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税については税法の改正により5年となりました。仮装隠ぺいの場合は7年間遡及可能です。
Q6 申告額が誤っていたり、申告しなかった場合のペナルティーにはどんなものがありますか?
A ●解釈誤りや計算誤りなど仮装、隠ぺいを伴わない場合は過少申告加算税が追徴税額の10%基本的にかかります。ただし、調査等によらず自主的に誤りについて修正申告をした場合には過少申告加算税はかかりません。
●無申告であった場合は無申告加算税が納めるべき税額のうち50万円以下の部分については15%、50万円超の部分については20%かかります。(平成19年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用。)ただし、調査等によらず自主的に期限後申告をした場合は無申告加算税が納めるべき税額の5%になります。
●仮装又は隠ぺいがあった場合は重加算税が追徴税額の35%(無申告の場合は40%)かかります。
また、税金の納付が遅れると、遅れた日数が2か月以内については年利7.3%、2か月を超えた日数については年利14.6%の割合で延滞税がかかります。
ただし、現在は以下のようになっております。
1.(1) 納期限(注2)の翌日から2月を経過する日まで
原則として年「7.3%」
ただし、平成12年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」の割合となります。
また、平成26年1月1日以後の期間は、年「7.3%」と「特例基準割合(注3)+1%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
・平成27年1月1日から平成27年12月31日までの期間は、年2.8%
・平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年2.9%
・平成22年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、年4.3%
・平成21年1月1日から平成21年12月31日までの期間は、年4.5%
・平成20年1月1日から平成20年12月31日までの期間は、年4.7%
・平成19年1月1日から平成19年12月31日までの期間は、年4.4%
・平成14年1月1日から平成18年12月31日までの期間は、年4.1%
・平成12年1月1日から平成13年12月31日までの期間は、年4.5%
2.(2) 納期限の翌日から2月を経過した日以後
原則として年「14.6%」
ただし、平成26年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
平成27年1月1日から平成27年12月31日までの期間は、年9.1%
平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年9.2%
3.(注3) 特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
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