第13回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・交際費(その3)
今回は前回と同様交際費勘定について税務調査での否認事例、誤りやすい事例について説明していきたいと思います。
Q4 交際費勘定の否認事例としてはどのようなものがありますか。
A
交際費勘定の否認事例は様々なケースがありますが、よく見受けられるのは不正計算を理由に否認されるケースがあります。例としては次のようなもの挙げられます。
① お中元お歳暮の費用
お中元やお歳暮にかかる金額のうち単価が3,000円以下のものを抽出して、少額であるとの理由で交際費から除外していた事例
② 社員慰労のための費用
特定の社員のみを対象とした「慰労」という名目で高級料亭、クラブ等における飲食の費用を福利厚生費として処理していた事例
③ 居酒屋での会議費
本来、会議をするのにふさわしくない場所での飲食費を打ち合わせのための会議費として処理していた事例
④ 会議が終わった後での飲食費
得意先との会議が終わった後、打ち上げと称して料亭で飲食した費用を会議費として処理していた事例
⑤ 得意先の役員に対する売上割戻し
売上割戻しを得意先ではなくその役員や従業員個人に対して行っていた事例
⑥ 業務用資産でないものによって行われた売上割戻し
売上割戻しと同一基準で得意先に物品を交付しているが、その物品が宝石・貴金属類・ゴルフクラブセットなど事業資産に該当しないものによって行っていた事例
⑦ 談合金の仮装経理
談合金の支出先を明らかにするのを避けるため、外注費として計上し、帳簿類に架空の作業内容を記載していた事例
⑧ 地元対策費のねん出
工場建設の際に生じた地元住民の反対を抑えるために地元の有力者に支払った工作活動費を設計料に仮装していた事例
⑨ 情報提供料の支出
情報提供を業としていない者に対して支払った情報提供料について、契約に基づいて支出しなければ交際費となるため、後日契約書をバックデートして作成した事例
Q5 交際費勘定の誤りやすい事例を教えてください。
A
誤りやすい事例としては以下のようなものが挙げられます。
① 接待に係るタクシー代を交際費として処理していなかった事例
得意先等を接待した時にタクシーを使ったときは旅費交通費ではなく交際費になります。具体的には得意先を接待を行う場所まで招くためのもの、得意先を自宅まで送り届けるためのもの、接待を行う自社の社員が接待場所まで移動するためのもの、自社の社員が深夜に帰宅するためのものなどが該当すると思われます。
② 売上割戻しと同一基準で商品券を交付しているにもかかわらず交際費として処理していなかったもの
商品券など引き換える物品が特定されていない商品引換券を得意先などに交付した場合、たとえそれが売上割戻しと同一基準で交付されたものであってもその費用は交際費に該当します。(旅行券、観劇券、御食事券なども同様です) ビール券、図書券などのように引き換える物品が特定されているものについては、売上割戻しと同一基準で交付した場合、その券面額がおおむね3,000円以下と少額であれば交際費には該当しません。
③ 売上割戻しを売上高や売掛金の回収高に比例して実施していなかったとして交際費処理していたもの
得意先がある営業地域の特殊事情、協力度合いなどを勘案して金銭で支出費用については交際費に該当しないとされています。
④ 社長の長男である専務の結婚披露宴の費用を、その披露宴に得意先等を多数招いたとの理由で交際費処理していたもの
結婚式や結婚披露宴は社会通念上、個人的色彩が強い私的な行事であり個人が負担すべきものです。 したがって、得意先などを多数招いたとしても交際費ではなく専務に対する役員賞与として取り扱われます
⑤ 役員に対する渡し切り交際費を交際費として処理していたもの
役員などに接待に使用するという名目で毎月定額を支給し、しかもその使途については報告を求めないという、いわゆる渡し切り交際費というものがあります。この渡し切り交際費は支給された者の給与として課税されます。
これが、給与とはされず法人の交際費であると処理するためには次のような点について注意する必要があります。
・必ず領収書などによりその使途を明確にしておくこと
・領収書が取れない場合はその状況をできるだけ詳細に記録しておくこと
・渡し切りにせず必ず精算を行うこと
<参考法令>措法61の4
措通61の4(1)−3、61の4(1)−4、61の4(1)−8
61の4(1)−15、61の4(1)−16、61の4(1)−21
61の4(1)−22、61の4(1)−23
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