第4回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上(その1)
今回から、各勘定科目別に税務調査における調査のポイント及びその対策などを紹介していきたいと思います。
税務調査において税務署は何を中心に調査をするかといえば一番の主眼はその法人や個人が不正を行っていないかどうかということである。すなわち、売上除外、架空仕入、棚卸除外、架空経費、架空人件費、利益調整等の不正計算をしていないかどうかということを中心に調査を行うことになる。これらの事実の有無を見極めたうえで、次は税務上誤りやすい科目について、税法に従って正しく処理されているかということを調査することになる。
まずは、最も重要科目である売上から税務署の目のつけどころ、調査方法を紹介することとする。
Q1 税務署は売上のどこに目をつけて調査するのですか。
A 売上の目のつけどころとしては、次のようなものがあります。
①売上除外(注)はしていないか。
売上除外の発見は帳簿等に載っていない取引を発見することになるわけであり税務署にとっても簡単なことではありません。がしかし様々な手法を駆使して発見に努めることになります。例えば売上発生に関連する費用から調査する方法、モノの動きから調査する方法、売上代金決済状況から調査する方法、現金管理状況から調査する方法、法人代表者や個人事業主の個人預金の動きより調査する方法などあらゆる角度から調査を実施し売上除外がないか検討をします。
(注)売上除外とは、意図的に売上を帳簿に計上しないことをいいます。
②売上の計上漏れ(繰り延べ)はしていないか。
これは正しい期間損益計算がなされているかといった観点で調査するものであり、翌期の帳簿に計上されている売上の中に調査対象期の売上とすべきものはないかを検討するものです。
Q2 売上勘定について税務署はどのように調査を進めるのですか。
A 調査を進める順序は、担当者によって様々ですが次のようなポイントを中心に調査を進めるのが一般的です。
①取引の流れ、作成帳簿等の把握
まず、会社や個人事業の事業内容を把握することに努めます。すなわち、モノの受注から出荷、相手方の検収、代金回収までの流れを聞き取りその中でどのような帳簿や記録が作成されているか、また、どの時点でどのような事実や帳簿等を基に売上を計上しているかを把握します。そして、把握した取引の流れ、帳簿等を基に売上除外の有無や売上繰延の有無を調査します。
②売上の計上時期が妥当かどうかの検討
売上の計上時期が税法に照らして妥当かどうかの検討です。モノの販売は引き渡しがあった日に売上を計上します。
その引き渡しがあった日をいつとみるかによって、出荷基準、検収基準、使用収益基準,検針基準などがありもっとも合理的な基準を採用します。
③翌期の売上からの検討
翌期に入ってから1か月〜2ヶ月くらいの売上請求書控、納品書控や帳簿等を調査し調査対象期の売上にすべきものがないか検討します。(売上の繰延べの有無の検討)
④他の費用項目からの検討
モノの引き渡しに関連する費用項目について(例えば運賃、手数料等)領収証等原始記録から売上計上の妥当性を検討します。
⑤資料との突合による検討
税務署の収集している資料(法定資料など収集形態は多岐にわたる)との突合によって売り上げ計上の妥当性を検討します。
⑥代金決済状況からの検討
代金決済がすべて完了しているが売上計上のないものがあればその処理の妥当性について検討します。
⑦現金有高からの検討
この方法は現金商売の業種によく使われます。事前通知なしに会社や事業所に臨場し実際の現金有高と金銭出納帳残高を突合し不一致がないか検討すると共に現金管理状況を検討し売上除外の有無を検討します。
⑧売上領収証控からの検討
領収証控やレジペーパーなど売上の基となる記録を把握し売上勘定と突合し、売上除外の有無を検討する。
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第5回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上(その2)
Q3 売上について否認を受けないための対策はありますか。
A 税務署の調査に対する事前準備として売上の繰延べや売上計上漏れ等がないかを以下のような点から検討することは可能です。
① 物の流れからの検討
御社で提供する物やサービスの流れから実際に計上すべき日に適正に売上が計上されているかを再度確認すること。
また、調査の際にモノの発注から納品、代金決済までの流れを税務署の調査担当者に説明できるようにしておくことも重要です。
② 翌期に計上している売上からの検討
翌期に計上している売上について、納品書や物の動きを再度確認し、当期の売上として計上すべきものはないかを確認します。
③ 金額未確定のものも売上計上されているかの確認
出荷基準を採用している場合、出荷済みではあるが金額未確定のものについても売上を見込みで計上する必要があります。
④ 売掛金残高の確認
売上計上が漏れており入金だけ記帳されているような場合もあり売掛金残高からの確認は重要です。
⑤ 手付金などからの検討
⑥ 現金管理を徹底すること
特に現金商売の場合は現金の入出金管理が徹底されているかが最大のポイントとなる。
Q4 売上について税務調査で指摘された例としてはどのようなものがありますか。
① 納品書控えや、領収書控えから
翌期の納品書控えを検討したところ、納品日が当期のものが発見されたり、会社が保管している領収書控えと帳簿の売上勘定を突合したところ売上除外が判明した。
② 売掛金残高から
御社の売掛金残高と取引先の買掛金残高を照合した結果、残高が不一致であることを端著に売上計上漏れが判明した。
③ 前受金残高から
④ 資料の突合から
税務署の調査担当者が持参した資料と帳簿の売上を突合したところ、売上除外が判明した。
⑤ 個人名義の預金の入金状況から
代表者の個人名義の預金の入金状況を検討したところ売上除外代金が入金されていた。
⑥ 代表者借入金から
実際は売上であるにもかかわらず、代表者借入金として処理していた。
⑦ 現金監査の実施から
現金商売について、現金監査を実施したところ、実際の現金有高のほうが金銭出納帳有高より多く現金売上の除外が判明した。
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