7回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上割戻し(その1)
売上割戻しとは、商慣習の一種で、得意先に対する払戻しや金銭による支出をいいます。
その額は会社の売上高や売掛金の回収高に比例して、又は売上高の一定額ごとに、あるいは得意先の営業地域の特殊事情、協力度合等を勘案して決められます。
Q1 税務調査において、売上割戻し勘定の目のつけどころはどこですか。
A 売上割戻し勘定の調査は、不正行為を行っていないか、その計上時期は妥当か、交際費に該当するものはないか等を中心に調査がおこなわれます。おもな調査
ポイントは次のようなものが挙げられます。
① 架空の売上割戻しはないか
税務調査は不正発見が最大の目的です。
② 相手方に対する不正加担はないか
調査対象者の不正発見だけではなく、得意先等の不正に加担していないかという点もポイントになります。
③ 計上時期は妥当か
売上割戻しの計上時期は相手方に対しその算定基準の明示があるか否かにより、[図1]のように定められています。
④ 交際費に該当するものが含まれていないか
売上割戻が金銭により得意先ではなく得意先の従業員などに支払われているような場合は交際費課税の問題が発生します。
[図1]売上割戻しの算定基準
| 売上割戻しの種類 | 計上基準 |
① | その算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ、その算定基準が相手方に明示されているもの | 割戻しの対象となる商品を販売した日か相手方に割戻額を通知又は支払った日 |
② | ① 以外の売上割戻し | 割戻し額を通知又は支払った日(注) |
(注)期末までに割戻金を支払うこと及びその算定基準が内部的に決定されており、確定申告書の提出期限までに相手方にその割戻額を通知した場合は、期末における割戻金の未払計上が継続適用を条件として認められる。
Q2 売上割戻し勘定についてどのように調査はすすめられますか
A おおむね次のような点を中心に調査が進められます。
① 算定基準の把握
まず売上割戻しについて、税務署の担当者はどのような算定基準に基づいて実施されたかを契約書、覚書、連絡文書、メール等から把握します。
その際、契約書、覚書、メール等が後からさかのぼって作成したものでないかということも調査の対象になります。
② 計上時期の妥当性の検討
次に前記の[図表1]の基準に従って、売上割戻しが計上されているかを検討します。
特に[図表1の②]については割戻額を通知した日、あるいは支払った日まで売上割戻しを計上できないわけですから、そこに計上の前倒しなどの不正がないかを金銭の支払い記録、得意先への通知書等から確認します。
③ 割戻し額の妥当性の検討
算定基準の基礎となっているもの、たとえば売上高、売掛金の回収高等から割戻額の妥当性を検討します。
④ 割戻金等の交付状況からの検討
割戻金等の交付状況の検討は、特に取引先以外に支払われている場合は不正行為や交際費課税の問題が発生する場合がありますので注目して調査を進めます。
なお金銭以外で割戻が行われる場合の課税関係は下記[図表2]のようになります。
[図表2]売上割戻と同一基準により物品等を交付する場合
交付物品等 | 課税関係 | ||
金銭 | 単純損金 | ||
物品 | 事業用資産(注1) | 棚卸資産 | 単純損金 |
固定資産 | 単純損金 | ||
物品 | それ以外 | 少額物品(注2) | 単純損金 |
それ以外 | 交際費 | ||
旅行観劇券等 | 交際費 |
(注1) 事業用資産とは、相手方において棚卸資産又は、固定資産として販売又は使用することが明らかな物品をいいます。
(注2) 少額物品とは、その購入単価がおおむね3,000円以下の物品をいいます。
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