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税務調査に関する役立つ知識

まずは本題に入る前に申告納税制度に関する義務を担保する制度についてから
始めていきたいと思います。


(以下はできるだけ平易なことばで簡潔にということを主眼に置きましたので説明不

十分な点が多々あることをあらかじめお断りします。)

第1回 事業所得者の記帳義務、帳簿等保存義務について

Q1 私は、個人事業者ですが、帳簿はつけなくてはいけないのですか?

A かつては事業所得などの合計が300万円以下の白色申告者は、帳簿を作って売上や

  経費を記帳する義務がありませんでしたが、2014年(平成26年)1月からは事業や不動産
  貸付等を行うすべての白色申告者に記帳義務が課されるようになりました。

 ●青色申告者の場合
    「青色申告者は、事業所得の金額や不動産所得の金額が正確に計算できるように、

      仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な書類を備えてすべての取引を正規の簿記の原
      則に従い、整然とかつ明瞭に記録しなければならない。」(所得税法148条①)となっ

      ています。

     つまり複式簿記の原則によって
 帳簿に記録する義務 があります。ただし、簡易

        な方法 による記帳(簡易簿記)も可能です。

  ●白色申告者の場合
     上記に述べたように改正になりました。

  条文では「不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての白色申告者
 は、一定の帳簿を備え付けてこれにこれらの所得を生ずべき業務に係るその年の取引のうち
 総収入金額及び必要経費に関する事項を簡易な方法により記録し、かつ、その帳簿や関係書類
 を整理して保存しなければならない」(所得税法231の2①)となっています。


Q2 帳簿は何年間保存しておかなければならないのですか?
 
A    帳簿等の保存期間を白色申告の記帳対象者と青色申告者を比較すれば次の

    ようになります。 

区分 記帳対象者 青色申告者
帳簿・決算関係書類 7年 7年
現金預金取引等関係書類 5年 7年(前々年所得が300万円以下の人は5年)
その他証ひょう書類 5年 5年

      参考・・・保存しなくてはならない帳簿書類とはいわゆる帳簿のほかに、棚卸表、決算

       書、 決算整理に関して作成した書類、取引に関して相手方から受け取った注文書、
       契約書,送り状、領収書、見積書等や自分の作成した書類でその写しのあるものは

      その写し(簡単にいえば、売上の請求書控え、領収書控えの類)のことです。

第2回 記帳義務違反、帳簿等保存義務違反をした場合の制裁等及び課税調査権について
 
Q3 帳簿を記帳しなかったり、保存しなかったりした場合になにか不利益はありますか?

A  青色申告の方が記帳、帳簿等保存義務に違反した場合
青色申告が取り消される場合があります。
  また、記帳、帳簿等保存義務に違反した白色申告の方に対しては課税庁(税務署等)は調査に際して
推計課税を行うことができることになっています。

  (所得税法156条)

Q4 税務調査はどういった権限で行われるものですか?

A 調査について必要があるときは、課税庁(税務署等)は納税義務者、源泉徴収票提出義務者等、取引関係者等に対し質問し、または帳簿書類等の検査を行うことができるという
質問検査権という権限が法律上認められています。(所得税法234条、法人税法153条他)
 また、課税庁(税務署等)の調査に対して不答弁・虚偽の報告をした場合は、刑事罰が科されます。


第3回 税務調査の遡求年分と加算税について

Q5 税務調査は、何年間さかのぼって調査が可能ですか?

A 通常の場合は
5年(以前は3年でしたが、平成16年4月1日以後に法定申告期限等が到来する国税については税法の改正により5年となりました。仮装隠ぺいの場合は7年間遡及可能です。

Q6 申告額が誤っていたり、申告しなかった場合のペナルティーにはどんなものがありますか?

A ●解釈誤りや計算誤りなど仮装、隠ぺいを伴わない場合は
過少申告加算税が追徴税額の10%基本的にかかります。ただし、調査等によらず自主的に誤りについて修正申告をした場合には過少申告加算税はかかりません。
  ●無申告であった場合は
無申告加算税が納めるべき税額のうち50万円以下の部分については15%50万円超の部分については20%かかります。(平成19年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用。)ただし、調査等によらず自主的に期限後申告をした場合は無申告加算税が納めるべき税額の5%になります。
  ●仮装又は隠ぺいがあった場合は
重加算税が追徴税額の35%(無申告の場合は40%)かかります。

  また、税金の納付が遅れると、遅れた日数が
2か月以内については年利7.3%2か月を超えた日数については年利14.6%の割合で延滞税がかかります。

  ただし、現在は以下のようになっております。 
 

1.(1) 納期限(注2)の翌日から2月を経過する日まで
 原則として年「7.3%」
 ただし、平成12年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、「前年の11月30日において日本銀行が定める基準割引率+4%」の割合となります。
 また、平成26年1月1日以後の期間は、年「7.3%」と「特例基準割合(注3)+1%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。

 ・平成27年1月1日から平成27年12月31日までの期間は、年2.8%

 ・平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年2.9%

 ・平成22年1月1日から平成25年12月31日までの期間は、年4.3%

 ・平成21年1月1日から平成21年12月31日までの期間は、年4.5%

 ・平成20年1月1日から平成20年12月31日までの期間は、年4.7%

 ・平成19年1月1日から平成19年12月31日までの期間は、年4.4%

 ・平成14年1月1日から平成18年12月31日までの期間は、年4.1%

 ・平成12年1月1日から平成13年12月31日までの期間は、年4.5%

2.(2) 納期限の翌日から2月を経過した日以後
 原則として年「14.6%」
 ただし、平成26年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
 平成27年1月1日から平成27年12月31日までの期間は、年9.1%
 平成26年1月1日から平成26年12月31日までの期間は、年9.2%

3.(注3) 特例基準割合とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。

 

 

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第4回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上(その1

今回から、各勘定科目別に税務調査における調査のポイント及びその対策などを紹介していきたいと思います。
税務調査において税務署は何を中心に調査をするかといえば一番の主眼はその法人や個人が不正を行っていないかどうかということである。すなわち、売上除外架空仕入棚卸除外架空経費架空人件費利益調整等の不正計算をしていないかどうかということを中心に調査を行うことになる。これらの事実の有無を見極めたうえで、次は税務上誤りやすい科目について、税法に従って正しく処理されているかということを調査することになる。
まずは、最も重要科目である売上から税務署の目のつけどころ、調査方法を紹介することとする。

Q1 税務署は売上のどこに目をつけて調査するのですか。

A 売上の目のつけどころとしては、次のようなものがあります。

売上除外(注)はしていないか。

売上除外の発見は帳簿等に載っていない取引を発見することになるわけであり税務署にとっても簡単なことではありません。がしかし様々な手法を駆使して発見に努めることになります。例えば売上発生に関連する費用から調査する方法、モノの動きから調査する方法、売上代金決済状況から調査する方法、現金管理状況から調査する方法、法人代表者や個人事業主の個人預金の動きより調査する方法などあらゆる角度から調査を実施し売上除外がないか検討をします。
(注)売上除外とは、意図的に売上を帳簿に計上しないことをいいます。
売上の計上漏れ(繰り延べ)はしていないか。

これは正しい期間損益計算がなされているかといった観点で調査するものであり、翌期の帳簿に計上されている売上の中に調査対象期の売上とすべきものはないかを検討するものです。

Q2 売上勘定について税務署はどのように調査を進めるのですか

A 調査を進める順序は、担当者によって様々ですが次のようなポイントを中心に調査を進めるのが一般的です。

①取引の流れ、作成帳簿等の把握

まず、会社や個人事業の事業内容を把握することに努めます。すなわち、モノの受注から出荷、相手方の検収、代金回収までの流れを聞き取りその中でどのような帳簿や記録が作成されているか、また、どの時点でどのような事実や帳簿等を基に売上を計上しているかを把握します。そして、把握した取引の流れ、帳簿等を基に売上除外の有無や売上繰延の有無を調査します。

②売上の計上時期が妥当かどうかの検討

売上の計上時期が税法に照らして妥当かどうかの検討です。モノの販売は引き渡しがあった日に売上を計上します。
その引き渡しがあった日をいつとみるかによって、出荷基準、検収基準、使用収益基準,検針基準などがありもっとも合理的な基準を採用します。

③翌期の売上からの検討

翌期に入ってから1か月〜2ヶ月くらいの売上請求書控、納品書控や帳簿等を調査し調査対象期の売上にすべきものがないか検討します。(売上の繰延べの有無の検討)

④他の費用項目からの検討

モノの引き渡しに関連する費用項目について(例えば運賃、手数料等)領収証等原始記録から売上計上の妥当性を検討します。

資料との突合による検討

税務署の収集している資料(法定資料など収集形態は多岐にわたる)との突合によって売り上げ計上の妥当性を検討します。

⑥代金決済状況からの検討

代金決済がすべて完了しているが売上計上のないものがあればその処理の妥当性について検討します。

現金有高からの検討

この方法は現金商売の業種によく使われます。事前通知なしに会社や事業所に臨場し実際の現金有高と金銭出納帳残高を突合し不一致がないか検討すると共に現金管理状況を検討し売上除外の有無を検討します。

⑧売上領収証控からの検討

領収証控やレジペーパーなど売上の基となる記録を把握し売上勘定と突合し、売上除外の有無を検討する。

 
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第5回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上(その2)

Q3 売上について否認を受けないための対策はありますか。

 税務署の調査に対する事前準備として売上の繰延べ売上計上漏れ等がないかを以下のような点から検討することは可能です。

 物の流れからの検討
  
御社で提供する物やサービスの流れから実際に計上すべき日に適正に売上が計上されているかを再度確認すること。
  
また、調査の際にモノの発注から納品、代金決済までの流れを税務署の調査担当者に説明できるようにしておくことも重要です。

 翌期に計上している売上からの検討
  
翌期に計上している売上について、納品書や物の動きを再度確認し、当期の売上として計上すべきものはないかを確認します。

 金額未確定のものも売上計上されているかの確認
  
出荷基準を採用している場合、出荷済みではあるが金額未確定のものについても売上を見込みで計上する必要があります。

 売掛金残高の確認
  
売上計上が漏れており入金だけ記帳されているような場合もあり売掛金残高からの確認は重要です。

 手付金などからの検討

 現金管理を徹底すること
  特に現金商売の場合は現金の入出金管理が徹底されているかが最大のポイントとなる。

Q4 売上について税務調査で指摘された例としてはどのようなものがありますか。

 納品書控えや、領収書控えから
  
翌期の納品書控えを検討したところ、納品日が当期のものが発見されたり、会社が保管している領収書控えと帳簿の売上勘定を突合したところ売上除外が判明した。

 売掛金残高から
  
御社の売掛金残高と取引先の買掛金残高を照合した結果、残高が不一致であることを端著に売上計上漏れが判明した。

 前受金残高から

 資料の突合から
  
税務署の調査担当者が持参した資料と帳簿の売上を突合したところ、売上除外が判明した。

 個人名義の預金の入金状況から
  
代表者の個人名義の預金の入金状況を検討したところ売上除外代金が入金されていた。

 代表者借入金から
  
実際は売上であるにもかかわらず、代表者借入金として処理していた。

 現金監査の実施から
  現金商売について、現金監査を実施したところ、実際の現金有高のほうが金銭出納帳有高より多く現金売上の除外が判明した。


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6回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・仕入 
仕入勘定も売上勘定とともに税務調査においては重点的な調査科目です。今回は仕入勘定について税務署の目のつけどころ、調査方法、対応策等を述べていきたいと思います。


Q1仕入勘定について税務署の目のつけどころとしてはどのようなものがありますか。


A 仕入勘定の調査は、架空仕入がないか、仕入の繰上計上がないかという点を中心に行われます。以下主なポイントを挙げていきます。


 架空仕入(注)はないか
  
税務署の調査は不正発見が主な目的であることからまずこの点を重点的に調査します。
  
具体的には法人(あるいは事業者)が記帳している帳簿や、保管している証憑類を様々な角度から検討します。
 
(注)架空仕入とは意図的に仕入取引がないのにかかわらず帳簿に記載して仕入があったように仮装することです。
 仕入れの繰上計上はないか
  
適正な期間損益計算の観点からの検討で、本来翌期に計上すべき仕入を当期に計上していないかという点を調査します。
 簿外仕入簿外売上はないか
  
仕入を簿外にすれば法人にとって不利になりますが、簿外仕入と同時に簿外売上を行う場合も想定されるため調査では簿外仕入の有無も検討します。
 仕入値引、返品の処理は妥当か
  
仕入値引、返品が確定しているにもかかわらず未処理となっていないかを検討します。


Q2 仕入勘定について税務署はどのように調査を進めますか


A 税務署の調査担当者によって進め方は様々ですがおおむね次のような点を中心に調査を進めていきます。
 取引の流れ、法人(事業者)が作成している帳簿等の把握
  
まず事業概況を把握するため発注から入荷、検収、代金決済までの流れを聞きその流れに従って各段階でどのような帳簿等を作成しているか、またどのような証憑類が保管されているか、どのような事実や帳簿等をもとに仕入を計上しているかを検討します。そして、このような流れの中で架空仕入や仕入繰上計上の有無を調査します。
 仕入の計上時期の妥当性の検討
  
商品等の流れからみて仕入れの計上時期が妥当かどうか検討します。また期末前の仕入の納品書を調査しその中に翌期のものが含まれていないかを検討します。
 仕入代金の決済状況等からの検討
  例えば通常は代金決済が振込であるが特定取引だけ現金決済である等イレギュラーな取引について決済が妥当かどうか検討します。
 取引態様からの検討
  スポット取引遠隔地取引、取引金額がラウンド数字のもの等についてその計上が妥当かどうか検討します。
 買掛金残高からの検討
  
長期にわたり買掛金残高が多額の取引先について、架空仕入、仕入取消、返品,値引の事実の有無等を検討します。
 証憑類からの検討
  
市販の領収証等を使っているもの、手書きのものなどを中心に不審な証憑類を抽出し架空仕入の有無を検討します。
 反面調査の実施
  
以上の調査により不審な仕入先が把握された場合、その仕入先に対して反面調査を実施し、その取引の妥当性を検討する場合もあります。


Q3 仕入勘定について否認をされない対応策はありますか。


A 物の流れや、代金決済状況等から事前に仕入や仕入値引、戻し、返品の計上時期について妥当かどうか再確認しておくことが必要です。対応策としては次のようなものがあげられます。


 物の流れからの確認と整理
  売上の場合と同様モノの流れからの検討が重要です。納品書、検収書控、入庫記録などからモノの流れを把握し、実際に計上すべき日に仕入を計上しているかを再度確認します。
  
また調査の際には自社で作成している帳簿や証憑類を基に物の流れとお金の流れを示し仕入をどの時点で計上しているかを、税務調査の担当者に説明できるよう整理しておくことが必要です。
 買掛金残高からの確認
  
買掛金残高が多額になっている仕入先に対してその原因を解明することにより仕入れの金額が過大になっていないか確認しておくことが必要です。
 翌期の仕入値引、戻し、返品等からの検討


Q4 仕入勘定否認の例としてはどのようなものがありますか。
A 仕入勘定否認の例としては次のようなものがあります。


 現金取引、スポット取引(単発取引)からの否認事例
  
現金取引、スポット取引(単発取引)の仕入先に対して反面調査を実施したところ架空の取引であった。
 証憑類の検討からの否認事例
  
市販の領収書や請求書のある取引先からの仕入が架空であった。
 買掛金残高からの検討による否認事例
  
買掛金残高が多額の仕入先について検討したところ、仕入の返品処理が計上漏れであった。
 仕入単価の変動からの検討による否認事例
  
利益調整のために当期の仕入単価を過大に計上し翌期に仕入値引の形で訂正処理をしていた。
 商品入荷記録からの検討による否認事例
  
倉庫における入荷記録がない仕入を検討したところ架空であった。
 工事原価の付け替え
  
建設業において、未成工事(期末時点で未完成の工事)に係る原材料等の工事原価を完成工事原価に付け替えていた。

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7回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上割戻し(その1)

売上割戻しとは、商慣習の一種で、得意先に対する払戻しや金銭による支出をいいます。
その額は会社の売上高や売掛金の回収高に比例して、又は売上高の一定額ごとに、あるいは得意先の営業地域の特殊事情、協力度合等を勘案して決められます。

Q1 税務調査において、売上割戻し勘定の目のつけどころはどこですか。

A 売上割戻し勘定の調査は、不正行為を行っていないか、その計上時期は妥当か、交際費に該当するものはないか等を中心に調査がおこなわれます。おもな調査

ポイントは次のようなものが挙げられます。

① 架空の売上割戻しはないか
 税務調査は不正発見が最大の目的です。

② 相手方に対する不正加担はないか
 調査対象者の不正発見だけではなく、得意先等の不正に加担していないかという点もポイントになります。

③ 計上時期は妥当か
 売上割戻しの計上時期は相手方に対しその算定基準の明示があるか否かにより、[図1]のように定められています。

④ 交際費に該当するものが含まれていないか
 売上割戻が金銭により得意先ではなく得意先の従業員などに支払われているような場合は交際費課税の問題が発生します。

[図1]売上割戻しの算定基準 

 

売上割戻しの種類

計上基準

     

その算定基準が販売価額又は販売数量によっており、かつ、その算定基準が相手方に明示されているもの

割戻しの対象となる商品を販売した日か相手方に割戻額を通知又は支払った日

     

    以外の売上割戻し

割戻し額を通知又は支払った日(注)

(注)期末までに割戻金を支払うこと及びその算定基準が内部的に決定されており、確定申告書の提出期限までに相手方にその割戻額を通知した場合は、期末における割戻金の未払計上が継続適用を条件として認められる。

 

Q2 売上割戻し勘定についてどのように調査はすすめられますか

A おおむね次のような点を中心に調査が進められます。

① 算定基準の把握
  まず売上割戻しについて、税務署の担当者はどのような算定基準に基づいて実施されたかを契約書、覚書、連絡文書、メール等から把握します。
  その際、契約書、覚書、メール等が後からさかのぼって作成したものでないかということも調査の対象になります。

② 計上時期の妥当性の検討
  次に前記の[図表1]の基準に従って、売上割戻しが計上されているかを検討します。
  特に[図表1の②]については割戻額を通知した日、あるいは支払った日まで売上割戻しを計上できないわけですから、そこに計上の前倒しなどの不正がないかを金銭の支払い記録、得意先への通知書等から確認します。

③ 割戻し額の妥当性の検討
  算定基準の基礎となっているもの、たとえば売上高、売掛金の回収高等から割戻額の妥当性を検討します。

④ 割戻金等の交付状況からの検討
  割戻金等の交付状況の検討は、特に取引先以外に支払われている場合は不正行為や交際費課税の問題が発生する場合がありますので注目して調査を進めます。
  なお金銭以外で割戻が行われる場合の課税関係は下記[図表2]のようになります。

 [図表2]売上割戻と同一基準により物品等を交付する場合

交付物品等 

課税関係 
金銭  単純損金 
物品 

事業用資産(注1)

棚卸資産  単純損金
固定資産 単純損金
物品 それ以外

少額物品(注2)

単純損金
それ以外 交際費
旅行観劇券等 交際費

(注1)   事業用資産とは、相手方において棚卸資産又は、固定資産として販売又は使用することが明らかな物品をいいます。

(注2) 少額物品とは、その購入単価がおおむね3,000円以下の物品をいいます。

 

 

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8回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・売上割戻し(その2) 

今回は前回に引き続き売上割戻しについての否認を受けないための対応策、否認事例、誤りやすい事例について説明していきたいと思います。

  Q3 売上割戻しについて否認を受けないための対応策について教えてください。 

 

A 対応策としては次のようなものがあげられます。

 ① 契約内容からの確認

  売上割戻しの契約内容を確認し、割戻額の算定根拠、計上時期を再度確認する必要があります。また、割戻額が売上高等の一定の基準によらないものである場合、その割合がどういった根拠によるものか説明できるように準備しておく必要があります。 

② 相手方への支払い、通知、算定基準明示の有無の確認

 売上割戻しの計上時期は原則として割戻し額を通知または支払った日、その算定基準が 販売額等によっておりその算定根拠が相手方に明示されている場合は割戻しの対象となる商品を販売した日となります。したがって売上割戻しがこれらの事実に基づき計上されているかを確認しておく必要があります。

 ③ 物品等により売上割戻しを行っている場合における物品等の内容確認

 売上割戻しと同じ基準で物品等を取引先に交付する場合、その物品等が少額物品や事業用資産でない場合には交際費課税の問題が発生しますのでその物品等の内容を確認する必要があります。

 ④ 支払い相手先の確認

 割戻金の支払い相手先がその取引先の代表者、従業員等である場合には、交際費課税の問題が生じます。

 ⑤ 割戻金を留保している場合

 契約等により割戻金が一定期間留保されている場合には、原則として現実に支払いがなされるまではその計上は認められませんからその留保状況を確認しておく必要があります。ただし、ここでは述べませんが例外規定はあります。

 Q4 売上割戻し勘定の否認事例にはどのようなものがありますか。 

A 売上割戻し勘定の否認事例には次のようなものがあります。

 架空の売上割戻しの計上

 簿外資金ねん出のため架空の売上割戻し契約書を作成し、現金で割戻額を支出していた事例

 ② 相手方との通謀によるもの

 正規の割戻額に一定額を上乗せして割戻金を相手方に支払い簿外で上乗せ分の返礼を受けていた事例 

③ 契約日の改ざんによるもの

 売上割戻しの契約を日付を遡って(バックデート)作成し、売上割戻しに仮装して相手方に対する利益供与を行っていた事例

 ④ 契約内容によるもの

 契約上の算定基準による売上割戻しより実際の支払われた割戻額のほうが過大であった事例

⑤ 支払い相手先から

 割戻金を得意先の従業員に支払っていた事例 

⑥ 割戻額の通知状況によるもの

 確定申告の提出期限までに相手方に対して割戻額を通知していないにもかかわらず期末に売上割戻金を未払計上していた事例

 ⑦ 割戻金の留保状況によるもの

 割戻金を留保するという契約があるにもかかわらず割戻しの対象となる商品を販売したつど割戻を計上していた事例

 Q5 売上割戻勘定について誤りやすい事例を教えてください。 

A 以上説明したもののほかに売上割戻勘定に係る誤りやすい事例としては売上割戻しと同 一の基準で物品を交付する場合における少額物品、事業資産の判定があります。

 ① 売上割戻額を商品券で交付しているにもかかわらず交際費としていなかった事例

 少額物品かどうかの判定(判定は通常の取引単位ごとによる)はその少額物品の購入単価がおおむね3,000円以下の物品であるかどうかで判断し3,000円以下であれば交際費には該当しません。よく問題になるケースとしては商品券やビール券のような商品引換券が少額物品にあたるかということですがしたの[図表1]のように判定します。

 [図表1]商品引換券における少額物品の判定

1) 引き換えることのできる商品が特定されているもの(ビール券、図書券など) その商品引換券の1枚の券面額、又はこれらに相当する金額を基準として少額物品かどうかの判定を行う
(2) 引き換えることのできる商品が特定されていないもの(商品券、お買い物券など) 券面金額がいくらであるかにかかわらず少額物品には該当せず、交付した費用は交際費になる
(3) 旅行券、観劇券、食事券などのように、これと引き換えに特定のサービスを提供するもの サービスは物品ではないので交付に要した費用は交際費になる

 ② 売上割戻しとしてゴルフのクラブを交付しているにもかかわらず交際費としていなかった事例

 交付した物品が事業用資産(相手方において棚卸資産又は固定資産として販売又は使用すること明らかな物品)である場合は、その交付に要する費用は交際費に該当しないものとされます。この場合、交付した物品が事業用資産に該当するかどうかは、その物品の性格に応じておおむね[図表2]のように判断します。

 [図表2]事業用資産の例

1)事業用資産に該当するもの

*商品陳列棚、レジスターなど事務用と

 して確実に用いられると認められる器

 具備品*商品運搬用の貨物自動車*従業員の使用する作業服

(2)事業用資産に該当するとはいえな いもの(注)

*貴金属類*美術品*娯楽、スポーツ用品*家庭用家具*家庭用電化製品

(注)このようなものでも、得意先の業種、業態によっては、事業に使用することが明らかな場合もあるので、その得意先の事情により判断する場合も考えられる。

 <参考法令等>法基通251252253

       措通6141)−36141)−4     

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9回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・棚卸資産(その1)  

今回は、棚卸資産勘定について税務調査における目のつけどころ等を紹介していきたいと思います。棚卸資産についても税務調査においては売上勘定 仕入勘定とともに最も重要な調査科目の1つです。その理由は、棚卸資産はその額が多額になる場合が多く、その多寡により、課税所得が大きく影響を受けるからです。 

また、棚卸資産は、取引先など外部への影響を考えることなく会社の内部だけで容易にその計上額の調整が可能であること、また調整をしたとしても翌期に戻しいれられるため、翌期にはその調整が治癒されることから、利益調整の手段として利用されることが高い科目だからです。

 Q1棚卸資産勘定の目のつけどころとしてはどのようなものがありますか。 

A 売上高に対応する売上原価の計算要素として期末棚卸高があるが売上原価の計算上期末棚卸高が過少に計上されれば当期の売上原価は過大に計上されることになる。したがって、税務調査においては期末棚卸計上額が過少となっていないか、すなわち、簿外の棚卸資産はないか、棚卸資産の過小評価はないかがポイントとなります。具体的には以下の3点を中心に調査が行われます。 

棚卸除外はないか

 これは、期末の棚卸数量を意図的に除外する不正行為である。棚卸除外は売上原価が過少計上されるのはもちろんのこと、棚卸除外により生じた簿外資 産をさらに簿外で売却したり、翌期に棚卸除外分に見合う架空仕入を計上してつじつまを合わせるといった不正につながる行為である。 税務署の調査担当者はまず、棚卸除外の有無に調査の重点を置きます。

棚卸資産の数量、評価は過少ではないか。

 計算誤りなどにより期末の棚卸数量が過少になっていないか、また単価については税務署に届け出た棚卸評価方法によって計算がなされているか、また、単価が過少に計上されていないかがポイントになります。

  評価損廃棄損の計上は妥当か。

 評価損は内部的に計上ができるため、その妥当性について検討を行います。 すでに、市場価値がないような棚卸資産については廃棄した上で廃棄損を計上する場合がありますが、調査においては廃棄の事実の有無、計上時期の妥当性について検討を行います。

 Q2棚卸資産について、税務署の担当者はどのように調査を進めるのですか。

A 調査担当者によって進め方には相違はありますがおおむね、次のような点を中心に調査を進めていくものと思われます。

棚卸資産計上までの過程の聞き取りをする。

 期末棚卸高は通常、実地棚卸をして、そこで把握した数量に単価を付して棚卸表を作成、棚卸表における集計額を期末棚卸として計上します。このような過程において、いつ、誰が、どのように実地棚卸をし、把握した数量を集計し、単価を付けたのか、ということを聞き取り不審点はないかを調査します。

実地棚卸の際の原始記録を確認する

 実地棚卸の際に使用した棚卸票、メモ書きなどの原始記録を把握し実際に棚卸を行っているか、原始記録における数量と最終的な棚卸表における数量とに差異はないか等を検討します。

棚卸資産の保管状況を現場に臨場して確認する

 棚卸資産の保管状況を確認するため、倉庫や資材置き場などに臨場し調査日現在の資産の状況、長期滞留商品の有無、商品受払の手続き、現場における作成帳簿等を把握します。

期末前後の売上、仕入から期末数量の妥当性を検討する。 

調査日現在の商品有高から期末数量の妥当性を検討する。

 特定商品について調査日現在の有高を把握し、次に決算日から調査日現在までの売上、仕入数量を把握することにより、期末棚卸高の妥当性を検討します。

預け在庫の計上漏れの有無を検討する。

 業者の倉庫に預けてある商品が漏れているケースが頻繁にみられるため、倉庫保管料などの計上の有無を確認したあと、預け在庫の全部または一部が簿外となっていないかを確認します。 また、仕入先や外注先に預けてある商品や原材料、仕入先が発送し当社にまだ到着していない商品(未着品という)などについて漏れていないか検討します。

仕入単価などから期末評価の妥当性を検討する。

 棚卸資産の評価について税務署に届け出た方法により正当に計算されているかを検討します。また、購入に際しての付随費用が棚卸資産の取得価額に適正に含まれているかについても検討します。

評価損計上の妥当性を検討する。

廃棄損計上の妥当性を検討する。

 実際に当該棚卸商品が期末までに廃棄されたかどうかを確認するためまず、その商品を廃棄した理由を聞き取ります。その後、廃棄業者から受領した原始記録や社内稟議書など廃棄の事実が明らかとなる資料から、計上の妥当性を検討します。 

〈参考法令〉法令2832 法基通5115112513914、 915 

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第10回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・棚卸資産(その2)  

今回も前回に引き続き棚卸資産について税務調査で否認を受けないための対応策、否認の事例、誤りやすい事例について説明します。

 Q3 棚卸資産について否認を受けないための対応策について教えてください。 

A 

棚卸に際しての原始記録を保管しておくこと。

 調査の際は、まず調査担当者は棚卸を実施したときの原始記録から実際に棚卸をしたのかどうか、実施したときの棚卸数量が正しく期末棚卸高に反映されているかどうかを確認します。 したがって、棚卸をした時の原始記録を基にどのように期末棚卸高を計算し、集計したのかという過程を説明できるようにしておく必要があります。

  期末前後の売上、仕入の状況から漏れがないか検討しておくこと。

 主要商品について、決算日前1〜2か月間の仕入数量を基に、また、決算日後1〜2か月間の売上数量を基に数量計算を実施し、棚卸資産の計上漏れがないか確認します。

 会社の外部の在庫の有無を確認しておくこと 

 倉庫や外注先、仕入先等に預けてある商品、あるいは未着品などがないかを確認しておきます。 

評価方法、計算過程を確認しておくこと。

 期末棚卸資産の評価方法が税務署に届け出た評価方法によっている、また計算過程に誤りがないかを確認しておきます。

 棚卸資産の取得価額を確認しておくこと。

 仕入の際の付随費用を棚卸資産の取得価額に含めているかを確認しておきます。(仕入の付随費用の例としては買入手数料、関税、検査料などが挙げられます。)

 評価損を計上した場合その根拠を確認しておくこと。 

 品質低下、陳腐化等により評価損を計上した場合、その原因及び計上額の算定根拠を確認しておき、調査の際に説明できるようにしておきます。

 除却損を計上した場合それが妥当であるかどうかを確認しておくこと。

 実際に棚卸資産を除却したのかどうか、また除却が期末までになされているのかどうかについて、廃棄業者の証明書や請求書等の原始記録から確認します。

 Q4 棚卸資産勘定の否認事例としてはどのようなものがありますか

 

棚卸の際の原始記録より 

 保管されている棚卸の際の原始記録を検討したところ原始記録の一部を破棄していることが明らかになったもの。あるいは、原始記録に記録されている数量の一部を改ざんしていたもの。

 棚卸表の集計状況より

 棚卸表の集計段階において故意に集計額を誤って計算し、期末棚卸高を過少に計上していたもの。

 在庫の現物確認調査より

 倉庫などの棚卸資産の保管場所に臨場し、調査日現在の在庫の状況を確認したところ、調査対象事業年度中に購入した商品が計上漏れになっていたもの。

  倉庫保管料より

 倉庫保管料の請求内容から検討を行ったところ、倉庫保管の棚卸商品の一部を除外していたことが把握されたもの。

 架空売上の計上

 期末に仕入単価とほぼ同額の単価で架空売上を計上し棚卸除外を行い、翌期に架空売上における単価より高い単価で簿外売上を行っていたもの。

 付随費用の計上漏れ 

引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料等、取得原価に含めなければならない費用を含めていなかったもの。

 低い単価による仕入

 期末直前に仕入先に依頼して、異常に低い単価で仕入を行い、期末棚卸資産の単価を引き下げていたもの。なお、翌期首の直後には、前回単価を引き下げた見返りに仕入単価は高めに設定されていた。

 未成工事支出金に係る工事原価の付け替え

 未成工事支出金に係る工事原価を、完成工事に係る原価に付け替えて期末の未成工事支出金を過少に計上していたもの。

 廃棄損の計上時期誤り

 廃棄したとされる商品の廃棄状況を廃棄業者からの請求書等から検討したところ、期末までに廃棄処分が行われていなかったもの。

 Q5 棚卸資産勘定について誤りやすい事例を教えてください。

 

引取運賃、運送保険料、購入手数料の金額が少額であるからという理由で棚卸資産の取得価額に含めなかった事例

 棚卸資産購入に際しての付随費用は引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税等の外部付随費用と買入事務、検収、整理、選別、配送等の内部付随費用に分類される。 内部付随費用については、棚卸資産の購入代価のおおむね3%以内の少額なものであればその棚卸資産の取得価額に含めないことができるが、外部付随費用についてはたとえ少額であってもその棚卸資産の取得価額に含めなければなりません。

 いわゆる規格製品のような代替性のある棚卸資産について個別法を適用していたもの

 個別法をいわゆる規格製品について適用した場合、会社にとって都合のよい価額を恣意的につけられる可能性があるため、適用できないことになっています。

 2年前に変更した棚卸資産の評価方法を今回また変更しようとしていたもの

 棚卸資産の評価方法の変更は、現によっている評価方法を採用してから相当期間(3年)経過していることが必要です。ただし例外的に認められるケースもあります。

 物価変動、過剰生産、建値の変更等の理由により棚卸資産の評価損を計上していたもの 

 棚卸資産については、破損、型崩れ,棚ざらし、品質低下、災害等による著しい損傷、著しい陳腐化が生じた場合などには、評価損の計上が認められますが、単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の理由だけでは評価損の計上は認められません。 

 

〈参考法令〉法法29,32,33 法令28,29,30,68法基通5−1−1、5−2−1、5−2−20、9−1−6

 

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11回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・交際費(その1)  

 交際費とは、租税特別措置法において「交際費、接待費、機密費その他の費用で法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」をいうとされています。 

 したがって、その範囲は広く、支出の相手方は、得意先、仕入先だけではなく、同業者、従業員、株主、地域住民などの事業関係者が含まれます。また、単なる飲食、贈答の費用だけではなく、謝礼金、リベート、情報提供料、談合金、地元対策費なども交際費に含まれる場合がありその処理について誤りが散見されるところです。 

 さらに、その否認額は、翌期以降認容(翌期以降に所得から減算されること)とならず、社外流出項目となるため、その影響は大きくなります。

  Q1 交際費勘定の目のつけどころとしてはどのようなものがありますか。 

 

 交際費勘定の目のつけどころとしては次のようなものがあります。

 本来交際に該当する取引を交際費に該当しない取引に仮装して処理していないか 

      交際費課税を免れるために、人数の水増し、請求書・領収書の内容の改ざん、バックデートによる契約書の作成などの仮想行為が行われている場合があ  ります。このような不正行為が明らかになれば当然、重加算税対象の否認になります。 

 交際費以外の費用科目の中に交際費に該当するものが含まれていないか 

  これは、いわゆる「他科目交際費」の検討といわれるもので必ずおこなわれるものです。特に誤りやすい勘定科目としては、会議費、支払手数料、売上割戻し、広告宣伝費、福利厚生費、給料、寄付金、雑費などが挙げられます。   

 ③ 固定資産や棚卸資産の取得価額の中に交際費に該当するものが含まれていないか  

   交際費は、その支出が行われた事業年度において課税関係が生じます。したがって固定資産や棚卸資産の取得価額に算入さておりその期の損金になっていない場合でも、その交際費は支出した期の交際費として損金不算入の対象にしなければなりません。 

 交際費の中に個人的費用や使途秘匿金に該当するものが含まれていないか  

   法人が交際費として処理している費用の中にも、その内容が役員等の個人的費用や使途秘匿金に該当するものが含まれている場合があります。この場合、役員等の個人的費用であればその役員に対する給与(あるいは賞与)として源泉所得税の問題が生じます。また使途秘匿金であれば使途秘匿金課税(40%の税額加算)の問題が生じます。よって、損金不算入対象とされている費用も調査のポイントとされる場合があります。

 Q2 交際費勘定について税務署の担当者はどのように調査を進めるのですか。 

 担当者によって相違はありますがおおむね次のような点を中心に調査は進められるものと思われます。 

 会社内部におけるチェック体制の把握

   まず、どのような費用を交際費として処理しているのか、また、その判定は誰があるいはどの部署が行っているのか、交際費の支出の承認はどの部署が行っているのかなどの会社内部のチェック体制を把握します。 

 元帳、経費帳、証憑類、契約書などからの検討 

 次に、元帳、経費帳などから交際費に該当すると思われる費用を抽出し、それに係る請求書、領収書、契約書などからその内容を検討し交際費加算漏れの 有無を調査します。その際、特に請求書、領収書に人数の水増し、内容の書き換えなどの改ざん、契約書がバックデートで作成されていないか等を重点的に調査します。 

 社内決裁文書などからの検討 

 稟議書や社内の決裁文書などから費用に支出目的、支出内容を検討し、交際費に該当するものがないかを検討します。  

 交際費に係る予算、実績からの検討  

  会社によっては各部署や担当者ごとに交際費の予算を定めている場合があり、その予算を超えて交際費が必要になった場合に他の科目に仮装して支出を行い交際費課税を免れようとする場合があります。そのため、各部署の予算、実績状況を把握し、交際費課税を検討する場合もあります。

  業種、業態からの検討  

  各業種、業態に応じ、特有の交際費支出があります。よって、税務署の調査担当者はその業種、業態に特有の支出について、準備調査の段階で十分理解した上で調査に臨み、これらの支出が交際費として処理されているか、また、計上がない場合には他の科目に仮装されていないか等の検討を行います。例えば建 設業においては地元対策費・談合金・元請担当者に対するリベート、医薬品製造販売業における病院や医者に対する利益供与などがこれに該当します。 

  反面調査の実施  

  調査対象法人の社内の帳簿や資料だけではその取引実態が明らかにならない場合はその支出先に対して反面調査を行い取引内容を確認する場合もあります。 

〈参考法令〉措法614、措通61424

 

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第12回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・交際費(その2)
今回は前回に引き続き交際費についての否認を受けないための対応策について説明していきます。

Q3 交際費について否認を受けない対応策について教えてください。

 交際費について否認を受けない対応策についてはもっとも重要なことは、交際費以外の科目に交際費に該当するものが含まれていないかをチェックすることです。
以下この点についての科目別にポイントを挙げていきたいと思います。

① 会議費
会議費と交際費の区別はしばしば、税務署との間でトラブルになります。会議費とは来客との商談、打ち合わせに際して社内または会議を行うにふさわしい場所において、昼食の程度を超えない飲食物の供与に要する費用を言います。
両者の区分のポイントとしては時間帯、場所、単価、アルコールの程度はどうかなどがあり、これらの点から税務調査では交際費に該当するものはないかを確認することになります。
したがって、税務署との無用のトラブルを避けるためにも社内で基準をつくり統一的に処理することが望ましいと思われます。
また、一般的に単価3,000円程度までの飲食費は会議費としても良いというようなことがよく言われますが、税務上会議費として認められる具体的な金額基準はありません。

② 売上割戻し
 得意先などに対し、売上高に比例して、あるいは売上高の一定額ごとに金銭で支出するものは売上割戻しに該当し交際費には該当しません。しかし、割戻しを金銭ではなく物品等の交付で実施する場合、たとえば宝石などの貴金属類、商品券、食事券など業務用資産(棚卸資産や相手方が固定資産として販売または使用することが明らかな物品)
や少額物品(購入単価がおおむね3,000円以下の物品)以外のものを交付すると交際費に該当します。
 また割戻金をその得意先などではなく、得意先等の役員や担当者個人に支払った場合は、たとえ金銭で支払った場合であっても交際費になります。

③ 販売促進費
 一般顧客から新規の客を紹介してもらったことに対する謝礼金などのように、情報提供を業としていないものに対する謝礼金については次の3つの要件すべてを満たしていなければ交際費になります。
・その金銭などの交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること
(契約は必ずしも契約書の形で作成されたものだけに限りません。)
・提供を受ける役務の内容がその契約において具体的に明らかにされていること
・交付した金品の価額が役務の内容に照らして相当と認められること

④ 福利厚生費
 交際費における接待の相手方は得意先や仕入先などには限りません。会社の役員、従業員、株主、地域住民等も含まれます。したがってたとえば社内において特定の従業員だけを飲食により慰労するような場合は交際費とされる場合があります。

⑤ 広告宣伝費
 通常広告宣伝活動は不特定多数の一般消費者を対象として行われるものです。したがってたとえば次のような者は一般消費者には当たりませんので注意が必要です。
・医薬品メーカーや医薬品販売会社における医師や病院
・化粧品メーカーにおける理美容院
・建材メーカーにおける建築業者 など
⑥ 旅費交通費
 交際費には得意先等を接待、供応するための費用がすべて含まれます。したがって接待の際得意先をタクシーなどで送迎する費用や、手土産代等も交際費となります。これらの交通費を交際費に含めていな法人が多く見受けられますので注意が必要です。

⑦ 会費
 親睦を目的とした同業者団体の会費やロータリー、ライオンズクラブ等の入会金や通常会費などは交際費に該当します。自社が入っている同業者団体の会則などを入手して内容を確認し交際費とすべき会費でないかを確認する必要があります。
 その他の交際費になる会費の例
  ・ゴルフクラブの会費やプレー代、名義書換料(新規に会員権を取得した場合を除く)、ロッカー料

⑧ 寄付金
 事業に直接関係のない者に対して金銭や物品などを贈与した場合は、原則として寄付金として取り扱われます。したがって寄付金勘定の中に事業に関連する者に対する支出が含まれていないか、また含まれている場合それが交際費に該当するものでないかを十分に検討しておく必要があります。

⑨ 交際費等から除かれる「一人当たり5,000円以下の飲食費等」
 平成18年4月1日以後に開始事業年度より1人当たり5,000円以下の飲食費(ただし、いわゆる「社内交際費」や「社内飲食費」は除く)については交際費とは別に損金算入が認められているが、この規定を受けるためには財務省例で定める書類の保存が必要になる。したがって当該規定を適用している法人については書類の保存はされているか、要件には合致しているかを再度確認しておく必要がある。(令21条の18の2に規定する要件を具備しなければならない。)

⑩ その他
 その他、入札における談合金の支出や総会対策としていわゆる総会屋に支払う費用も交際費とされますがこれらの支出は外注費、支払手数料、広告料、情報提供料等の科目に仮装して支出されることが多いようです。したがって、税務調査においてはこれらの支出が交際費であるとして否認された場合、科目や支払う理由を仮装しているとして重加算税の対象となる場合がほとんどです。
 これらの支出は本来あってはならないものですが、仮に支出する場合は間違いなく交際費として処理しておくことが必要です。

〈参考法令〉措法61の4、措通61の4(1)−1、61の4(1)−3、61の4(1)−4、  61の4(1)−8、61の4(1)−9、61の4(1)−10、61の4(1)−15、61の4(1)−21、61の4(2)−7、法基通9−7−14、9−7−15、9−7−15の2

 

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13回 科目別税務調査の目のつけどころ・・・交際費(その3)

今回は前回と同様交際費勘定について税務調査での否認事例、誤りやすい事例について説明していきたいと思います。

 Q4 交際費勘定の否認事例としてはどのようなものがありますか

 

 交際費勘定の否認事例は様々なケースがありますが、よく見受けられるのは不正計算を理由に否認されるケースがあります。例としては次のようなもの挙げられます。

 ① お中元お歳暮の費用 

   お中元やお歳暮にかかる金額のうち単価が3,000円以下のものを抽出して、少額であるとの理由で交際費から除外していた事例 

② 社員慰労のための費用  

   特定の社員のみを対象とした「慰労」という名目で高級料亭、クラブ等における飲食の費用を福利厚生費として処理していた事例

 ③ 居酒屋での会議費  

  本来、会議をするのにふさわしくない場所での飲食費を打ち合わせのための会議費として処理していた事例

 ④ 会議が終わった後での飲食費 

 得意先との会議が終わった後、打ち上げと称して料亭で飲食した費用を会議費として処理していた事例 

⑤ 得意先の役員に対する売上割戻し 

 売上割戻しを得意先ではなくその役員や従業員個人に対して行っていた事例

 ⑥ 業務用資産でないものによって行われた売上割戻し 

 売上割戻しと同一基準で得意先に物品を交付しているが、その物品が宝石・貴金属類・ゴルフクラブセットなど事業資産に該当しないものによって行っていた事例 

 ⑦ 談合金の仮装経理 

 談合金の支出先を明らかにするのを避けるため、外注費として計上し、帳簿類に架空の作業内容を記載していた事例

 ⑧ 地元対策費のねん出  

  工場建設の際に生じた地元住民の反対を抑えるために地元の有力者に支払った工作活動費を設計料に仮装していた事例

 ⑨ 情報提供料の支出  

 情報提供を業としていない者に対して支払った情報提供料について、契約に基づいて支出しなければ交際費となるため、後日契約書をバックデートして作成した事例

 Q5 交際費勘定の誤りやすい事例を教えてください。

 

 誤りやすい事例としては以下のようなものが挙げられます。

 ① 接待に係るタクシー代を交際費として処理していなかった事例  

  得意先等を接待した時にタクシーを使ったときは旅費交通費ではなく交際費になります。具体的には得意先を接待を行う場所まで招くためのもの、得意先を自宅まで送り届けるためのもの、接待を行う自社の社員が接待場所まで移動するためのもの、自社の社員が深夜に帰宅するためのものなどが該当すると思われます。 

② 売上割戻しと同一基準で商品券を交付しているにもかかわらず交際費として処理していなかったもの

 商品券など引き換える物品が特定されていない商品引換券を得意先などに交付した場合、たとえそれが売上割戻しと同一基準で交付されたものであってもその費用は交際費に該当します。(旅行券、観劇券、御食事券なども同様です)  ビール券、図書券などのように引き換える物品が特定されているものについては、売上割戻しと同一基準で交付した場合、その券面額がおおむね3,000円以下と少額であれば交際費には該当しません。

 ③ 売上割戻しを売上高や売掛金の回収高に比例して実施していなかったとして交際費処理していたもの 

 得意先がある営業地域の特殊事情、協力度合いなどを勘案して金銭で支出費用については交際費に該当しないとされています。

 ④ 社長の長男である専務の結婚披露宴の費用を、その披露宴に得意先等を多数招いたとの理由で交際費処理していたもの 

  結婚式や結婚披露宴は社会通念上、個人的色彩が強い私的な行事であり個人が負担すべきものです。 したがって、得意先などを多数招いたとしても交際費ではなく専務に対する役員賞与として取り扱われます

⑤ 役員に対する渡し切り交際費を交際費として処理していたもの
  役員などに接待に使用するという名目で毎月定額を支給し、しかもその使途については報告を求めないという、いわゆる渡し切り交際費というものがあります。この渡し切り交際費は支給された者の給与として課税されます。
  これが、給与とはされず法人の交際費であると処理するためには次のような点について注意する必要があります。
  ・必ず領収書などによりその使途を明確にしておくこと
  ・領収書が取れない場合はその状況をできるだけ詳細に記録しておくこと
  ・渡し切りにせず必ず精算を行うこと

 

 <参考法令>措法61の4
         措通61の4(1)−3、61の4(1)−4、61の4(1)−8
         61の4(1)−15、61の4(1)−16、61の4(1)−21
         61の4(1)−22、61の4(1)−23


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