Q1 会費・入会金等についての目のつけどころ
会費・入会金等に係る調査のポイントには、どのようなものが
ありますか。また、調査はどのように進められますか。
A 法人は、その事業活動に役立てるため、様々な団体、すな
わち同業者団体、ゴルフクラブ、レジャークラブ、社交団体、
従業員福利厚生団体等に加入します。
税務調査においては、そのような団体に対して、法人が支払う
会費・入会金等に係る税務処理の妥当性につき検討が行われます。
すなわち、その会費等の支出が、
(1) 個人的な費用に該当するものではないか
(2) 交際費に該当するものではないか
(3) 寄附金に該当するものではないか
(4) 資産計上すべきものではないか
(5) 翌事業年度以降の費用とすべきものではないか
というポイントを中心に調査が進められることになります。
また、調査を進めるにあたっては、経費帳、稟議書、出席報告
書、領収書、請求書、加入している団体等の会則・規約、会報、
会計報告等の資料を中心に検討が行われます。
調査を受ける法人側もこうした調査ポイントに対応した事前チェ
ックが必要となります。
Q2 否認事例及び誤りやすい事例
会費・入会金等における否認事例、誤りやすい事例にはどのよう
なものがありますか。
A 否認事例及び誤りやすい事例としては、次のようなものがあ
ります。
(1) 法人が支出したゴルフクラブの入会金を入会時に会費として損
金処理していたもの
ゴルフクラブの入会金や他から購入したゴルフクラブ会員権の
実績は、ゴルフ場施設利用権(一種の無形固定資産)であるとい
われています。
そして、その施設利用権は、次のような性質を有しており、税
務上は、無形の非減価償却資産であるということができます。
① 永久利用権としての性格を有しており、ゴルフ場がプレー可能
である限りその利用権の価値は減少しない
② 会員権を他に譲渡することにより、投下資金を回収できる
③ 水道施設利用権や電気通信施設利用権のように、税務上、償却
が可能な無形減価償却資産として列挙されていない
したがって法人がその業務目的で支出したゴルフクラブ入会金
や他から取得したゴルフクラブ会員権については、たとえ脱会時
に入会金の返還を受けられない場合とか、権利を他人に譲渡でき
ない場合であっても、入会時の損金処理は認められず、プレーが
可能である限り資産計上する必要があり、その償却も認められな
いこととされます。
そして、ゴルフクラブを脱会してもその返還を受けることがで
きない場合におけるその入会金やその会員たる地位を他に譲渡し
たことにより生じたその入会金に係る譲渡損失については、その
脱会をし、又は、譲渡をした日の属する事業年度において損金の
額に算入することになります。
なお、他人の有するゴルフ会員権を購入した場合には、その購入
代価にゴルフクラブに支払う名義書換手数料、ゴルフ会員権取扱い
業者に支払う購入手数料を含めて資産に計上する必要があります。
(2) 代表者等が法人の業務と関係なく個人的に利用するためのゴルフ
クラブの入会金を法人の資産として計上していたもの
① 法人会員として入会する場合
法人会員として入会する場合、入会金は、原則として、資産とし
て計上する必要があります。ただし、記名式の法人会員でも名義人
である特定の役員や使用人が専ら法人の業務に関係なく利用するた
め、これらの者が負担すべきものであると認められるときは、その
入会金に相当する金額は、これらの者に対する給与(賞与)とされ
ます。
② 個人会員として入会する場合
個人会員として入会する場合、その入会金は、原則として、個人
会員である特定の役員や使用人に対する給与(賞与)とされます。
ただし、(i)無記名式の法人会員制度がないため個人会員として入
会し、(ii)その入会金を法人が資産に計上した場合で、(iii)その入
会金が法人の業務の遂行上必要であるため法人の負担すべきもので
ある場合には、その資産計上を認めることとされています。
(3) 法人がすでに所有しているゴルフ会員権(法人会員記名式)の会
員名義書換料を単純損金として処理していたもの
得意先の接待等のために法人がゴルフ会員権を取得する際に支出
した名義書換料は、取得のために要する費用としてその会員権の取
得価額に含める必要があります。
しかし、本事例のように、すでに法人が保有している会員権にお
ける会員の名義を書き換えるための費用は交際費に該当します。こ
のような名義書換料は、ゴルフ場における接待等を継続するために
必要とされる費用であり、プレー代の一部として支払われるもので
あるという考え方によるものです。
なお、脱会や会員権の譲渡により損失が生じた場合には、その損
失については、交際費には該当しないものとされています。
(4) ゴルフ会員権の時価が大幅に下落しているという理由で評価損を
計上していたもの
税務上、ゴルフ会員権は、金銭債権や有価証券ではなく、無形固定
資産とされている水道施設利用権や電気通信施設利用権など同様にゴ
ルフ場の施設を利用できる権利(ゴルフ場施設利用権)すなわちプレ
ー権であるとされています。
そして、そのプレー権は、永久利用権としての性格を有しており、
ゴルフ場でプレー可能である限りその利用権の価値は減少しないもの
とされています。
そのため、水道施設利用権や電気通信施設利用権のように、税務上、
償却が可能な無形減価償却資産としても列挙されていません。
したがって、市場におけるゴルフ会員権の相場が、その取得価額よ
り大幅に下落していたとしても、まだプレーが可能である限り、プレ
ー権の価値は減少しておらず、その会員権についての評価損の計上は
認められないということになります。
(5) レジャークラブの入会金を資産計上せず支出時の損金として処理し
ていたもの
レジャークラブ(宿泊施設、体育施設、遊技施設などを会員に利用
させることを目的とするクラブ)の入会金についての取扱いは、原則
として、ゴルフクラブの入会金の取扱いと同様とされています。
すなわち、法人会員として入会する場合、その入会金は資産計上す
る必要があり、その償却は認められていません。また、特定の役員等
が個人的に利用する場合はその者に対する給与となります。
しかし、①その会員として有効期間が定められており、かつ、②そ
の脱退に際して入会金相当額の返還を受けることができない入会金に
ついては、その利用できる期間において費用化することが合理的であ
ると考えられることから、繰延資産として計上し、償却することが認
められています。
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